最近結成されたアイドルグループ「スイマー」は、男性五人組のユニットだ。
基本的なセンターを務めるのは、エースでクール系担当の七瀬遙だ。
リーダーは癒し系担当の橘真琴。
他にセクシー系担当の松岡凛。
可愛い系担当の葉月渚。
ミステリアス系担当の竜ヶ崎怜。
この五人でスイマーは組まれている。
ちなみにスイマーはその曲の雰囲気によってセンターが変わる。基本的に遙くんが務めているけど、Aメロは真琴くんがセンターだったりBメロは凛くんになったり、渚くんと怜くんのダブルセンターもある。
今日は新曲のレッスンがあり、振付師である私が指導をする。指導といっても彼らと私は年が近いからここはこうしていただけたら幸いですみたいな教え方をいつもしている。
センターの遙くんが気だるそうに真ん中に立ち、その両側を今回の副センターの真琴くんと凛くんが固める。そしてその斜め後ろにはコンビ人気が高い年下組の渚くんと怜くんが並ぶ。
よし始めるかと指示を出そうとしたその瞬間。凛くんが遙くんに突っかかっているのを見て、声が喉の辺りで止まった。
「ハル!今俺の足踏んだだろ!」
「踏んでない」
「嘘つけ!」
「踏んだ」
「踏んでるじゃねえか!なんで一回誤魔化したんだ!」
つーんとしている遙くんと激昂する凛くん。その間に入り、納めようとしている真琴くんと渚くん。どうするべきか考えてむむむと唸っている怜くん。だいたいいつもこの流れだ。
遙くんと凛くんは仲がいいんだか悪いんだか、ほぼ毎回喧嘩している。レッスンが進まなくなり、私としては困るのだ。
「遙くん。わざとじゃないんだよね。でもなるべく足は踏まないように」
遙くんはこくりと頷く。実に素直である。
「凛くん。今回の凛くんのソロパート、歌詞が超絶かっこいいから早く練習しよう」
ファンのみんなも喜ぶから。と付け加えると、凛くんはピタッと怒鳴るのをやめてポジションに戻る。意外と扱いやすいのだ。