お願いだから


「ねぇ翔ちゃん翔ちゃん」

「？何だ？」

「寒い」

「奇遇だな、俺も寒いぜ」

「こんな寒いのに何でここは暖房入ってないの？」

「そんなの俺に聞くな
寧ろ俺が聞きたいくらいだっつーの」

「えー、翔ちゃん役立たずー」

「俺？え、俺が悪いの？」

「うん」

「うん、俺ここの生徒だから暖房についてなんか知るかよ」

「あれ？翔ちゃん生徒だったけ？」

「そこから？そこからなの？」

「…ってこんな会話しても温かくはならないか…」

「そうなったらうるせぇから辞めろ」


…と彼らは他人から見たら何だこいつらと思うような会話をしてます。
あ、私ですか？
私は一ノ瀬トキヤです。決してぼっちではありませんしぼちノ瀬でもありません。
スタイリッシュ☆ぼっちでもありません。言い方を変えればいいわけではありません。
取り敢えずぼっちではないのでそう思った方は表に出ましょうか、一度絞めて差し上げます。
…、今は私のことよりあの二人ですあの二人。
寒い寒い煩いです、聞いてるこちらまで余計に寒く感じてしまうではありませんか。
因みに私はこの冬大活躍のホッカイロをしていますから大して寒くないです。


「翔ちゃん寒い」

「おい待てお前
それじゃあ俺様が寒いみたいだろ！」

「じゃあ改めて…
…翔ちゃん寒い」

「…変わってねぇぞ」

「あれ？変えたつもりだったんだけど」

「…もういいや、次行こうぜ次」

「ネタないんだけど」

「何かあるだろ！」

「例えば？」

「…えっと、だな」

「…翔ちゃんだってないんでしょ？」

「まあな！」

「威張るようなことじゃないよね」

「…これはもうあれしかなくね？」

「やっぱりそう思う？」

「あぁ」


あれとは何でしょうか？
それに心なしかこちらに歩いて歩いて来ているような…


「トキヤさんトキヤさん」

「…何でしょうか」

「寒い」

「そんなの冬だから当たり前でしょう」

「だからさトキヤ「お断りします」まだ何も言ってねぇ！」

「翔ちゃんはいいとしてここにか弱い乙女がいるんだから少しくらい気を遣いなさいよ」

「そうそう俺はいいとして…ってよくねぇよ！」

「何かさっきからおチビちゃん達賑やかだね」

「あ、神宮寺」

「あ、レン」

「レンいたのですか、気づきませんでした」

「イッチーさりげなく酷いとこ言うね」

「すいません本音が出てしまいました」

「…で、何の話をしていたんだい？」

「ここ寒いよなって「翔ちゃんが寒いよねって話」俺はさむくねぇ！」

「成る程ね」

「どっちで納得したんだお前」

「ここが寒いほうで」

「よしレンお前今から俺様の家来にしてやる」

「心からお断りしておくよ」

「な ん だ と」

「そんなことよりもレディ、寒いなら俺が温めてあげるからこっちにおいで」

「却下」

「なら俺を温めろ」

「残念ながら野郎は受け付けてなくてね」

「お前俺様の家来だろ！」

「なった覚えはないしお断りしたはずだけど」

「じゃあトキヤでいいや
おいトキヤ、俺様を温めろ」

「死んでも嫌です」

「じゃあホッカイロ寄越せ」

「嫌です」

「お前ら俺が嫌いなのか！」

「「…、……」」

「何故そこで黙る何故そこでお互い顔を見合わせる」

「え、名無しちゃん空気？
寂しいんですけど」

「…さ、レディあっちの方が暖かいからあっちへ行こうか」

「まじでか！行く行くー」


何故だか知りませんがここは早く立ち去った方が安全ですね…
と思ったので早速立ち去らせていただきます。


「おい待てトキヤ
心の声聞こえてるから」

「…なら、私も楽譜を完璧に暗記したいので」

「待てって言ってんだろ！
あ、こらっ足なげぇからって今活用すんなあああああああああああああ！」


後ろで翔の叫びが聞こえましたが私の耳はそんなもの聞いてませんよ、絶対に聞いてません。

さ、練習しに行きましょうか。



「お前ら何か友達じゃねぇえぇええぇぇえぇえぇええぇ！」



お願いだから
(俺様を置いてくんじゃねぇ！寂しいだろうが!!)
(翔ちゃん弄るの楽しいよねー神宮寺)
(おチビちゃんは一々反応が面白いからね)
(…翔の叫びなど私は聞いていませんよ)


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