きっとこれは




最近僕は妙な気持ちになる。

マスターである名無しには何一つ不自由ない生活をさせてもらい、リンと二人で歌う曲や俺だけのソロ曲も沢山作ってくれる。


歌を歌うために生まれた僕にとってこれ以上に嬉しいことはない。…筈なのに、最近マスターから恋の歌を与えられる度、心のどこかで歌いたくないと思ってしまう。

ウイルスにでも感染してしまったのだろうか、とも思ったりしたが片割れであるリンには何の変化もない。
寧ろ「そんなこと聞くなんて頭おかしくなったの?大丈夫?」なんて逆に心配(馬鹿にされたような気もした)されたり。
ミク姉にも聞いてみたけど「ミクは特に何ともないかな?」って言いながら僕を見てニヤニヤしてた。…ちょっと頭おかしくなったのかなって思ったけど、ミク姉は怒ると説教中正座しなくちゃならないからぐっと抑えた。

二人とも何ともないらしいからウイルスのせいではないとは分かった。…だとしたら何だろう?
でもマスターには心配かけたくない。だから仕方なくリンに相談してみた。


「…ってわけなんだけどさ、どう思う?」

「どうって?」

「リンとミク姉は何ともないから僕だけウイルスに感染する可能性は低いし、だけど歌いたくない気持ちもなくならないし…」

「…、どんな歌を歌いたくないって思うの?」

「ちょっと馬鹿にしてない?
どんな歌…、主に恋愛かな?ってか恋愛以外は歌いたくないって思わないかも」

「…これは重症だわ」

「え、やっぱりウイルス!?」

「……」

「…何で黙るのさ」

「いや、ちょっと鈍感すぎる弟が可哀想で」

「僕鈍感じゃないけど」

「…ま、それは置いとこう
レンは恋愛系の歌は嫌いなの?」

「マスターが作る歌はどんな歌も好きだよ!
ただ、こう…モヤモヤするって言うか…」

「うん、リンさん原因わかっちゃった」

「え、教えて!」

「見ててうざいから教えてあげる」

「弟に向かって酷くない?」

「あ、つい本音が出ちゃった☆
本題に入るけどさ、それきっと恋だよ」

「恋?」

「だって嫌なんでしょ?マスターが自分じゃない誰かへの想いを書いた歌を歌うのが」

「…多分、そうだと思う」

「…じゃあさ、レンは恋愛系を歌うとき誰を思い浮かべてる?」

「マスター」

「そこだけ自信満々なんだね
マスターが“これはレンを想って書いた曲だよ”って言ってきたらどうする?」

「嬉しすぎて死ねる」

「そこまで分かってんならもう気付こうよ」

「僕が、マスターに恋をしてる…?」

「うん、確実にね」

「…だから歌いたくなかったんだ」

「レンを想った歌なら「超歌いたい」…最後まで言わせてよ」

「あ、ごめん」

「でもさウイルスじゃなくて良かったじゃん?」

「ありがとなリン」

「もっとお姉様を崇めな!」

「まじ天才すぎて困っちゃう」

「じゃあ天才すぎるリンに蜜柑持ってきなさい」

とリンは告白の報告と一緒にね?と笑みを浮かべて俺の背中を押した。

「ファイトだよ!」

何だかんだ応援してくれるんだ、良い姉を持ったなと思った。それにこの気持ちに気付かせてくれたし…


でもフラれたりしたらどうしよう。悲しすぎて立ち直れないかもしれない…
…ってどのタイミングで告白したら良いんだ?


ごめん、リン。報告ちょっと待ってくれ





(初めての恋で、)(何もかもがわからないんだ)



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