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それはすでに病

「まさか宮野の生き残りがいたなんてな…」
「しかも松永に仕官していたとは」

奥州へと帰った伊達軍らも、松永軍との戦における損害は大きかった。それぞれが傷を癒し休養する中、またそれは政宗と小十郎も同じだった。それから数日して、政宗の部屋に呼びつけられた小十郎は、あの日見た青年、創痍の話をしていた。滅亡したはずの宮野という一族。彼らは忍の一族としてとても優秀で、戦国武将らはこぞってその里の人間を欲しがった。しかし、十数年前のとある日、何者かに里を焼かれ、里に住む宮野の人間は全て殺された。焼け跡からは惨憺たる状態が伺え、宮野は滅んだとされていた。宮野の一族の人間は黒い髪、青い目、そして左耳だけ銀細工の耳飾りをしているという特徴を持っていたのだが、創痍はそれに全て当てはまる人物だった。政宗らもまだ幼い頃の話ではあるが、父からその話を聞かされていたことがあったのだ。

「おそらく、当時あの場から逃げ出してどこかで生き延びていたのでしょう。それを松永が”見つけた”のかと…」
「アイツは悲劇のHeroってワケか」

しかし、天下獲りに名を挙げない久秀がなぜ宮野の人間を欲したのか。それは謎のままだった。

「しかし…面倒なことになってしまいましたな、あの創痍という男…松永はどう使うつもりか」
「Ha,心配にも及ばねえな!」

政宗の言葉に小十郎が首をかしげる。

「あの男、松永に心酔してやがる」

上杉のところの、くのいちみたいに。いや、それよりもっと酷いかもしれないな、と言って。

「周りが見えていないんじゃ、戦にもならねぇよ」


「卿の存在が日の本に知れ渡ってしまうだろう」
「そうかな…」
「そうだよ」

創痍が宮野の一族であるということは久秀、松永軍の一部の者達だけが知っていた。特に、織田に関しては細心の注意を払い久秀がその存在を隠してきた。創痍を忍ばせ、人目にふれないように。今回の伊達との戦は勝てるものだと思っていたが、予想外の苦戦で創痍の本性が現れた。

「俺は久秀じゃないと嫌だよ」
「私が卿を他の輩に渡すと思うかね」

そう言えば、創痍はくしゃくしゃに表情を崩して、「うれしいなぁ」と言った。

「これから…様々なことを覚悟しなければならないだろう」

久秀の表情は曇っていた。先の見えぬ不安、あってはならない暗い未来が彼の目先を過る。創痍は久秀のその表情を見て、どうしようもない不安に襲われたが、久秀を引き寄せると強く抱きしめた。

「世界が久秀と俺だけならいいのに、」