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ふたり

目が覚めたとき視界に映ったのは天井。同じような木目がずっと続いているのを見て創痍は、「ああ生きていたのか」と思った。起き上がろうとすると右肩と腹筋に鋭い痛みが走り、思わずうめき声をあげて傷口を押さえる。きちんと包帯が巻かれており、誰かに手当をされたことが伺えた。

「目が覚めたのかね」
「…久秀?」

ようやく周りの様子を気にする余裕ができたとき、創痍の耳に届いたのは愛しい久秀の声だった。首を横に向けると、創痍の寝ている布団のすぐ傍らに座り、書物を読んでいた手を止めて創痍を見つめている。

「うわぁ…よかったぁ…無事だったんだね…」
「ふん…その為の抜け道だ」
「そうだけどさぁ…」

抜かりの無い久秀は、大仏殿に「もしも」の時のための脱出口を用意していた。伊達軍の政宗や小十郎、兵士達が目撃した爆発に気を取らせ、その姿をくらまし、創痍も共にそこから抜け出していたのだ。

「死んだと思ってるよ、伊達軍の人達」
「そうだろうね」

素っ気なく答える久秀の着流しの、肌が露出している部分には、創痍と同じように包帯が巻いてあった。やはり彼の傷もそう浅くは無い。久秀を傷つけたことに対し、創痍は伊達に対する恨みをひどく増幅させた。

「三日も寝ていたのだよ、卿は」
「えっ本当?」
「死んだかと思ってね…あまりに呼びかけても目が覚めないものだからな。呼吸はしているが。」

そう言う久秀の表情はどこか不安げであった。普段は滅多に見せない彼のその表情に、創痍は思わず声をあげた。

「…死ぬわけないじゃん」
「分かっているよ」

しかし、と言った久秀が下を向いて、拳を握りしめた。それを見て創痍は困ったように笑うと、その手の上から自分の手を重ねた。

「ずっと一緒だよ」

いつか死んでしまう時も、例え死んでしまったとしても。そう言って、久秀の手をきゅうと握り締めた。創痍は痛む体に鞭を打って、上半身だけ起き上がらせる。久秀のほうに向きなおると、創痍は彼の額に自分の額を当てた。しばらくそのままの状態で、何も言わずにいた。額越しに、重ねた手越しに伝わる互いの体温に、互いが生きているという事実を噛みしめ、瞳の奥から溢れそうになる涙を堪えた。それから創痍はにこりと笑って、

「しばらく安静できるからいいじゃん。誰にも邪魔されずに二人でいれるしね」

創痍の言葉に久秀も思わず表情を崩した。