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愛しているなんて


「本当、運命だったんだよね。あれって」
「五月蝿いよ」

久秀の城中。大勢の人間が住まい、それぞれが慌ただしく働いている中、その雰囲気と隔絶されたかのような離れの一室に久秀と、あの青年がいた。青年の名は創痍と言う。久秀が創痍を連れてきた日から比べると、随分と印象は変わっていた。薄汚れていた身なりはすっかり小奇麗になっており、黒い忍装束を身に纏っていた。そして、目に捕えた者を射殺さんとするばかりの鋭い瞳は柔らかい目つきへと変わっていた。もう一つ。変化したのは久秀と創痍の関係もだ。
きゅう、と創痍は久秀を後ろから抱きすくめて顔を久秀の肩口に顔をうずめた。久秀の首にあたる創痍の髪がちくちくとしてくすぐったい。
「一年って意外と早いんだねー」
「…」

あれから一年。創痍は最初の冷たく、反抗的な印象から、久秀と共に過ごしていく中で、明るい男へと変わっていた。元がそうだったのか、久秀は創痍の過去をあまり詳しく知らないので分からないのだが。創痍にとって、久秀は自分を殺しかけた男である。仕官したといえども、初めの頃は久秀に警戒をしていたのだが、その反面、久秀に魅せられていった。今ではこの通り久秀に懐いている。
創痍は五歳にして育った里が焼き討ちに遭い、同時に両親も亡くし、それから一人で生きてきた。寂しかったんだ、と創痍は言った。瑣末、と久秀は言ったが。
創痍は久秀から与えられた任務も完璧にこなし、久秀の他の家臣にも良い印象を与えていた。ただ、日を重ねていくうちに創痍の久秀を見る目はだんだんと変わっていった。久秀はそのことに気付いていたが、若さ故の一時の気の迷いだろう、とその事実を軽く見ていた。しかし、いつの間にか創痍の調子に乗せられて、あれよあれよという間に恋仲になっていた。

「ねえ久秀、あの接吻って何だったの?」
「別に何でもないよ」
「えー?」

あの時、自分でもなぜ創痍に接吻をしたのか未だによくわからないのだ。

「一目惚れかなあ」
「有り得ないね」
「いや違うね。やっぱり一目惚れだよ」

久秀は最初から俺のことが好きだったんだね、えへへ、と後ろから間の抜けた創痍の笑い声が聞こえてくる。久秀はため息をついた。

「久秀」
「何だね」
「好きだよ」

毎日のように囁かれる愛の言葉は何故か久秀を飽きさせなかった。創痍の言葉は心地よく久秀の耳に流れて、脳を麻痺させるかのようにとろとろと溶けていった。
「馬鹿め 」