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なんとなく

創痍は家に帰って、久秀が入学式のときに渡したハンカチを洗濯して、アイロンをかけていた。創痍の頭に思い浮かぶのは久秀のことばかりだった。

(早く会いたいなあ・・)

ふと浮かんだ感情は、まるで恋をしたときのような、熱っぽくて浮ついたものだった。





「ぁん?創痍、どこ行くんだよ」
「ちょっと松永せんせーのとこ!」

次の日の昼休み。昼食をとろうと創痍の元にやってきた元親そっちのけで、創痍は教室を飛び出していった。その様子を元親はぽかんと口を開けて眺め、その後大きなため息をついた。(あいつは昔っからああなんだよな)心の中でそう呟く。創痍は昔から夢中になることがあると、それだけしか見えずに突っ走るタイプだった。

「それにしても何で松永なんだ・・?」



「そういえば職員室ってどこ・・・?」

人気のない廊下。校内放送の音楽だけがスピーカーを通して虚しく流れていた。創痍は、ぽつんと廊下の中央に立って、自身が職員室への道順を知らずに教室を出てきたことを後悔していた。さらにここがどこかも分からない。

「 ・・・最悪」

思わずしゃがみ込んで頭を抱える。終わった、と一人で呟いた。そのときだった。

「・・・アンタ何してんの?」
「え、」

創痍が振り返り、その視界に捉えたのは迷彩柄のヘアバンドをした赤髪の青年。上履きの色を見れば創痍と同じ学年だということが分かった。その瞬間、創痍は急に安心して目頭が熱くなったのを自覚した。

「あ・・!ああ・・・・!」
「うわっ、ちょっと泣かないでよ!ああもう何なの本当?!」

人気のない廊下で、高校生の男が二人。赤髪の青年は面倒なことに巻き込まれた、と心底嫌そうな顔をして、泣きつく創痍の背を左手でぽんぽんとあやす様に撫でていた。



「で、職員室の行き方がわかんないの?」
「うん・・」

赤髪の青年に『それぐらいもう覚えたら?』と呆れ顔で創痍は言われて、項垂れる。しゅんとする創痍を見て青年はまた、ため息をついて立ち上がった。

「俺様が連れてってあげるから」
「ありがとうっ・・・!」

創痍はふにゃりと表情を崩して青年の後をついていく。容姿の良い二人の男子生徒が並んで歩く姿はそれだけで女子の視線を集めることとなった。職員室へと近づけば近づくほど、人通りも多くなり、さらに多くの人間の視線を集めた。
そんな視線に気づいている赤髪の青年は目があった女子に愛想よく笑いかけていて、創痍もまた、下心というものは無いが同じような行動をしていた。

「じゃ、ここだから。職員室」

職員室の前に辿りつくと青年は創痍にそう言って、その場を離れようとした。

「あ、待って!」

創痍の声に青年は振り向く。

「名前、聞いてなかった。教えてよ!俺1Aの宮野創痍!」

そう創痍が名乗ると、青年は一度ぱちり、とまばたきをした後に笑って

「佐助。1Cの猿飛佐助。よろしくね?」

創痍が『ありがとう』と礼を言う前に佐助は人混みに紛れて姿を消していた。一瞬の出来事に創痍は首をかしげる。それと同時に一つだけ思うことがあった。


「初めて会った気がしないんだよなぁ・・・」


ぽつり、そう呟いて。『あの、入れないんですけど・・・』と同学年の女子から言われるまで創痍は職員室の前でしばらく呆けていた。


つづく


*昔とはある意味逆の出会い方