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拍手御礼5 子供がほしい男主と久秀さん

街になまえと買い物に来た時のことだった。ある程度街中をぶらぶらして、一通りことが済んでさあ帰ろうかと思った頃になまえがトイレに行って来ると言って、なまえが入って行った店の近くの広場で待たせられていた。
広場のベンチに座り辺りを眺めていると一人の、おそらく3、4歳くらいの女の子が久秀の元に歩いてきた。ピンクのリボンで髪を二つに結って、服はフリルの裾がついたピンク色のポンチョに、同じようなスカート。まるで人形を連想させるようなその外見は可愛らしかった。
左手で目をしきりに擦りながら小さな嗚咽をあげている。久秀はあまり子供が好きではなかったので、近づいてくる女の子をちらりと一瞥しつつ嫌な予感がしていた。そして、見事にそれは的中する。

「・・・まま」
「なっ・・・」

女の子は久秀のコートを掴んで、そう言った。久秀の聞き間違いでなければ、そう、『まま』と。驚いて女の子を見つめる久秀に負けじと女の子も見つめ返してくる。

「まま!」
「何をっ、私は卿の母親ではないよ!」
「ままあああっ!」

久秀の膝に女の子はしがみついて『いやあああ』と叫ぶ。焦る久秀をよそに女の子は一行にそれをやめない。久秀のことを『まま』と言って離さないのだ。
騒がしい雰囲気に辺りもちらちらと二人のことを見てきたので久秀は引き剥がそうとするのをやめて女の子を隣に座らせた。

「何が悲しくてこんな目に遭わねばならんのだ、」

独り言を呟いた久秀をよそに女の子は久秀の右腕にしがみついていた。本気で久秀のことを母親と勘違いしているのならばこの子供は天然というか、馬鹿というか(まず性別から違うのだが)。久秀はなまえのことを思い出してため息をついた。

「あれ・・・?久秀?誰その子・・・」
「なまえっ・・・」
「ぱぱーーーーっ!」

やっと戻ってきたなまえは久秀の腕にしがみついて離さない女の子を見てそう言った。なまえに事情を話そうとした久秀そっちのけで女の子は今度はなまえの足に抱きついた。

「・・・パパ?」

絶句するなまえ。女の子は未だなまえから離れない。久秀はますます頭が痛くなった。

「久秀・・・」
「何だね」
「もしかしてこの子・・・俺たちの子供?」
「違う」

*

事情を話すとなまえは苦笑いをしていた。おそらく迷子だろうという結論に至って、二人で女の子の両親を待つことにした。

「かわいいなぁ、俺もこんな子供ほしいなぁ」

女の子の相手をしながらなまえはそう言った。ベンチに座る久秀は呆れ顔でそれを聞く。

「卿は保健体育を受けなおしてきたほうが良いと思うが」
「おれ保健体育のテストさあ、えろいとこだけ良かったんだよねぇ」
「・・・変態」

なまえに相手をしてもらって満足気に笑う女の子を見ていると、最初は鬱陶しく思っていたが、だんだんとそれも微笑ましいものへと変わってきた。

「雛子!」
「あっ!ママー!」

突然女性の声がして、久秀となまえはそちらを振り向くと、一人の女性と、おそらくその夫が一緒に居た。二人は駆け寄って女の子を抱きしめる。やっと親が来たな、と言う久秀になまえも頷いた。

「迷子になってたんですよ、この子」
「すいません、ご迷惑をおかけしまして・・」

なまえがそう両親に言えば、二人とも何度もお礼を言って頭を下げてきた。
別れ際に久秀となまえに何度も手をふる女の子を見て、二人は寂しいような、そんな気持ちになった。


*

「あーかわいかった、もうちょっと技術進歩とかしないかなぁ。そしたらさあ、久秀と俺の子供が出来るじゃん?」
「生物学的に不可能だ」
「俺本気だもん、だから想像ふくらませてるんだ」
「・・・卿は本当に馬鹿だね」

暗い夜道を二人で歩く。久秀の右手となまえの左手はなまえのポケットの中だった。

「久秀似の女の子」
「・・なまえ似の男、」

少しずれたが重なったその言葉になまえは目を真ん丸くさせて驚いた後に、じゃあ双子がいいかなぁ、と言って微笑んだ。



* ご め ん な さ い