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ほんとうのこと

終わりは本当に呆気なく、突然訪れた。

「あれ・・・?」

ふと見た自分の手が、透けていた。ぼやぼやとした蜃気楼のように揺れて、また元に戻る。隣に居た勝姫の瞳が揺れた。

「・・・」
「・・帰るときがきたみたいだねぇ・・・」

不安定に透けたり消えたりして揺れる自分の肌を見つつなまえは勝姫に言った。元の世界に帰れるかもしれない、ということに安心を覚えたが、それと同時に勝姫との別れに心臓が大きくなった。勝姫は、どうなるのだろうか。冷やりとしたものが背筋を伝う。

「姫・・・」
「あのね、 なまえ」
「 ん?」
「私がなまえのこと呼んだの」

突然の言葉になまえは目を見開いた。いつもとは違う、勝姫の真剣な表情はなまえは一度も見たことがなかったものだった。

「それって、 どういう」
「私が死んでから、ずっと見守ってたの、久秀さんのこと」
「え?、」
「何十年もして、なまえが来たんだもん、びっくりしちゃった、・・寂しかったけど、でも、なまえに会いたくて」

あまりにも常識を飛んだ告白に正直なまえの頭は着いていけなかった。しかし勝姫の目は真剣で、その表情は穏やかだった。

「ここに来る前になまえ、階段から落ちたでしょう?だからなまえをやっとこっちに連れて来ちゃった」
「こっちって、 俺・・死んだの、?」
「死んだっていうか、 生死の間をさまよってるっていうか・・・」

でも、

勝姫は言った。

「よかった、なまえに会えて、」
「姫、」
「久秀さんのことよろしくね?」

段々と消えかかるなまえの手に勝姫は触れて

「久秀さんって寂しがりやなの、 だからなまえが、」
「姫、 そんな、っ・・・!まだ何も、姫にお礼してないっ・・」
「なまえと会えたことがいいの! ばか、泣かないでよ!」

ぽろぽろとなまえの瞳から涙がこぼれていく。それを見た勝姫の瞳にも涙がたまっていた。

「、ありがとう っ・・・!姫ぇっ、 」

なまえの視界がだんだんと白くなっていって、耳に聞こえる音も遠くなっていく。眠くなるようなその感覚になまえは必死で目を開けようとした。もう駄目だ、となまえが思った瞬間だった。最後に見えたのは勝姫の泣き笑いする顔で、

「 だぁいすき、 なまえ 」

彼女の桃色の唇はそう動いた。


*厨二的解説
なまえが居たのは死んだ勝姫が連れてきた現世じゃないようなところ
なまえがいた時間は勝姫の記憶の中みたいな・・・