×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -







世界で一番

「もうだいっきらい!」
「どしたの?姫」

過去に来てから早くも一週間。元の世界に戻る手がかりもなく俺は唯一俺の存在が見えている久秀の奥さん、勝姫と一緒に居た。(姫の奴隷っていう立場だけど)

「久秀さんがかまってくれないの!」

執務執務っていつもそればっかり、ひどいようと泣く姫を見て頭を撫でる。

「忙しいからねぇ、」
「それじゃだめーっ!いつも私が一番じゃないと駄目っ!」
「わがままだなぁ」
「わがままじゃないーっ」

相当甘やかされて育ったんだろうなと思いながら、駄々こねる姫を見る。でも姫はそんな我儘も全部許してしまうぐらい可愛くて、これじゃあ家臣の人たちが甘やかすのも当然だなぁって。
久秀の奥さんだった姫、嫉妬よりも俺が感じたのは家族愛みたいな、そんな感情だった。

『卿が来る随分と前に死んだ』

ここに来る前に聞いたその言葉がふっと思い出された。目の前に居る姫がいずれ死ぬ、と考えるとなんともいえない気持ちになった。

「もう久秀さんなんてきらい、」
「嫌いなんて言ったら久秀が怒っちゃうよ」
「それはだめっ」
「姫は難しいねぇ」

めそめそと泣きながら俺の膝の上に乗っかってくる姫。最初はびっくりしたんだけど、彼女なりの甘え方なんだなぁ、と最近分かった。

「久秀さんもなまえみたいに優しかったらいいのに」
「優しいよ、久秀は」
「何でわかるの?」
「分かるからね」

はは、と笑うと姫は不思議そうな表情をした。

「なまえって何者なの?」
「俺は俺だよう、」

ほんとにわかんない、と言ってまた抱きついてきた姫の背に肩を回してゆっくりと目を瞑った。


*スキンシップが激しい二人。