×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -







階段から落ちました


「私にも妻がいたのだよ」
「えっ」
「何を驚く必要がある、誰だっているに決まっているだろう」
「あ、 ・・・うん そう、だね」
「卿がくる随分と前に死んだが・・・」
「へえ、」

言われて見れば、そうだなあ、と。
久秀に奥さんがいないわけないじゃん、かっこいいし。
どんな人だったんだろう。でもなんか複雑。

・・・

「 あれっ、 ここ」
「うわあ、あなた誰ー?」
「えっ、 あの、 」

部屋に帰る途中に、城の階段を登っていると踏み外してまっさかさま。
頭を打って気を失ったと、と思った。再び目を開けたときはそこは外だった。
そして自分の身体の上には、自分と同じ歳くらいかそれより少し年下の少女が乗っていた。

「ねえ誰?その左手の腕章ってうちの家紋でしょ?新しい忍者?でもすっごいまぬけー、木から落ちてくるなんて」

質問攻めにあいながらなまえは混乱していた。
少女の髪は腰につくほど長く、毛先はゆるいウェーブがかかっていた。着物は派手な桃色で、南蛮の洋服に似た様なデザインだった。

「ねえもう、質問にこたえてよっ!むかつく!」
「むかっ・・・!俺、  なまえだよ、」
「ふーん、なまえかぁ、ねえ久秀さんに会いに行こうよ!おもしろいものみつけちゃった!」
「久秀!?」

驚くなまえをよそにその少女はなまえの手を引っ張って屋敷の中へと入っていく。すれ違う家臣たちからは、『ご機嫌ですね、姫様』といわれていた。
(姫って、もしかして)

「久秀さぁーん!!!」
「騒々しい、・・・何だね」
「ひさ・・・ っ、 ?ひで、?」

少女があけた部屋には一人書物を読む、久秀がいた。
しかし彼はなまえの知るよりもずっと若い頃の彼だったのだ。

「ねえ面白いものみつけたの!これ!」

少女がなまえを押し出す。なまえは久秀の目の前に出された。

「・・・・ 勝、気味の悪い真似はよしたまえ、何もないではないか」
「えっ?」

驚き目を合わせる少女となまえ。久秀は気味悪そうに少女を見ていた。