腐女子の元に男主がトリップしてきました 5
2011/05/29 12:09
創痍殿が消えたのは今から一週間ほど前のことだった。
武田軍との戦中、真田幸村と刃を交えていた創痍殿が真田の槍を受け損ね、右腕に傷を負った。
そのままもう一撃、と討ち取られそうになったその瞬間、創痍殿が消えていた。
その場に居た人間すべてが凍りついた。
真田も動揺し、そしてその場に居た松永様も驚きを隠せてはいないようだった。
松永様を前にして創痍殿が敵から逃げるはずなど無い。
結局我が軍は退却せざるをえなくなった。
城に帰ってからは松永様は城の兵から忍から、何から何までを使い創痍殿を探させていた。
手がかりになる情報は一切つかめず、神隠しなど言う者も現われた。
松永様の機嫌も相当悪い。険悪な雰囲気が軍全体を包んでいた。
早く創痍殿に帰ってきて欲しい、と誰もが思っている。
*
「創痍さん、あの・・・」
「・・・」
私達は赤髪のお兄さんと金髪のお姉さんを家の中に入れて介抱をしていた。
二人ともまだ目が覚めない。創痍さんはさっきから黙ったままだ。
「あの、この二人、どちら様か知ってるんですか?」
「・・うん、」
やっと口を開いた、と思えばその声は不安げだった。
「俺と同業者の人だよ」
「ええ・・・?!ってことは」
「俺と一緒のところからやってきた、ってこと」
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