体育祭シリーズ2(準備編)
2011/05/29 11:53
「宮野君お願い!」
「えっ、なにっ?!」
「団対抗リレー、出てくれない?」
5限目はロングホームルームだった。
体育祭で振り分けられた団ごとに別れ、競技にどの生徒を出すのか生徒たちで決める。
やる気を出して会をまとめる者、やる気もなく寝ている者、友達と話して決めている者。
集まった物理室には色々な生徒がいて、それぞれのことをしていた。
フォークダンスのことで頭がいっぱいの創痍は会の内容も頭に入ってこずにただ椅子に座っていた。
前の黒板のほうでは元親が騒いでいるのがぼんやりと見えた。
その矢先のことだ、1人の女子に声をかけられたのは。
「リレー?」
「宮野君って足速いんでしょ?聞いたよー!」
「え、あ、・・そっかなぁ?」
「で、出るの?出ないの?」
ずい、っと攻め寄られて創痍は『はい』という返事以外しようがなかった。
創痍の返事を聞いた女子は機嫌よさそうに黒板のほうへと行って、競技参加者の欄に創痍の名前を書いていた。
「・・・はぁ」
*
「ただいまぁ」
「お帰り」
「え?」
「何幽霊をみたような顔をしているのだね卿は」
「だって、久秀いつもこんな時間に帰ってこないじゃん・・」
「いつもより早く仕事が片付いたのでね、悪かったか?」
「そんなことないよう・・!」
時計は7時過ぎを回っていた。
久秀はいつも8時過ぎに帰ってくる。
珍しく創痍を迎えた久秀の姿に、創痍は嬉しく感じつつもなんだか後ろめたいような気もした。
*
「・・・」
「珍しいな、卿が口を開かないのは」
「え、・・そ、そうかなぁ?」
「いつも鬱陶しいからね」
「・・・うん」
生返事しかしない創痍に久秀はつまらなさそうに顔をしかめる。
「久秀ぇ」
「!」
急に抱きついてきた創痍に久秀は何も言えずにただ背に手を回すことしかできなかった。
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