分裂
2011/03/26 18:47
創痍が二人になった。
非常に五月蝿い上迷惑な話である。久秀は二人が騒ぐのを見て溜息をついた。
「俺が本物だもん!」
「俺だって本物だよ!」
「・・・」
瓜二つだ。左耳についている5個のピアスも、つんつんした黒い髪も、青い目も。
どちらも本物だ。先程忍装束を捲らせたら二人の胸には久秀がつけた刀傷。
久秀と創痍の二人しか知らないことを質問してみてもどちらも全く同じ正解の回答をする。
やはりどちらも創痍なのだ。
「「ねえ、久秀?俺が本物だよね?!」」
勢いよくこちらを向いて久秀に問う。久秀は肘掛に肘をついて二人の創痍を見た。
「どちらも本物だよ、五月蝿いから騒ぐでない馬鹿者」
二人になった理由はよく分からない上に気になるが、久秀は面倒だったので早くこの二人を黙らせたかった。
久秀の言葉を聞きやっと黙った二人に久秀は安心して部屋から出て行こうとしたが。
がしっ
「・・・何をする」
片方の創痍が久秀の肘を掴んでいた。もう片方は先程と同じ位置に座っている。
「三人でしたい」
「何、を」
じっと久秀の瞳を見つめてくる。久秀はしばらくしてその意味を理解してすぐに自身の身の危険を察した。
危ない。
創痍一人ぐらいならすぐにその場から離れられるが、今回は二人だ。
「・・・・離したまえ!」
手を振り払って襖に手をかける。しかし久秀の左側にはいつのまにかもう片方の創痍がいた。
「どっちも本物の俺なんでしょ?久秀」
「う、五月蝿いよ・・!意味の分からんことを言うな!」
「じゃあどっちの俺も好きになって?」
耳元で囁かれる。ぞくぞくとして久秀は身震いをした。
久秀が隙を見せた瞬間二人の創痍は久秀の両手をがっちりと握り締めてそのままいつ敷いたのか布団の上に連れて行かれた。
「い、嫌だ・・・!」
次の朝庭の木に両頬を赤く腫らして身体を縄でしばりつけられ吊り下げられた二人の創痍が城の様々な家臣に目撃されたのであった。
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