久秀の奥さんと久秀と俺 4
2011/02/12 08:44
「綺麗だねえその花、そんなの見たこと無い」
「でしょー?」
今日の姫はいつもより上機嫌で、耳の少し上には見たことないような、綺麗で、濃い桃色の花がついていた。
綺麗な黒い髪によく映えている。
「私の為だけに咲くのよ、可愛いでしょう?」
「うん、可愛いねぇ、本当。姫の為だけに咲いてるみたい」
俺の胸に寄りかかって、姫は楽しそうに笑う。
「久秀さんも、綺麗だ、って言ってくれたの」
「よかったじゃん」
しばらく久秀に構ってもらえないとぐずっていた姫だったけど、その久秀の一言だけですぐに上機嫌になる。
可愛いなぁ、って思って。それは妹を思うような愛しい気持ちだった。
「創痍は」
「うん」
「ここに来たみたいに、いつか、突然消えるの?」
「わかんない」
そしたら寂しいなぁ、もう甘える相手がいなくなっちゃうから、
姫はそう言ってしばらく俺の傍から離れなかった。
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