※現パロ


「ラビ先輩って肉か女の臭いしかしませんよね」


突然やってきた後輩が、笑顔でとんでもないことをオレに向かってさらりと言った。休憩中、見計らったかのようにオレの側にそそくさと寄ってきて、飲み物でもくれるのかと思ったら 爆弾をぶち込んできた。オレなにかした?ていうか、こいつ部員じゃねえし。しかもマネージャーでもねえし。ユウの後輩だよな?茶道部員だよな?なんでいんの。オレの気持ちを察したのか、そいつはにやぁと笑った。こわい。女の子ってそんな顔するの。そんな悪人面するの。こわい。


「悪人面ってひどくないすか」

「エスパー?読むのやめてくんない」

「先輩が分かりやすすぎるんですよ」

「マジでか」

「もうほんと 馬鹿丸出し」

「はっ倒すぞ」


汗を拭いていたタオルでぱしぃん!とカーブをきかせて叩いた。すごいイラッとした。エメラルドグリーンのリボンで首締めてやろうかと思った。しかもうしろによろけた所為でみたくもないものみえちゃったんだけど。赤とか。うわ。


「なにじっと眺めてるんですか変態」

「もうさぁ なにしに来たんさ」


ただ嫌がらせじみた言葉を言いに来ただけなの?だとしたら泣くよオレ。とりあえずユウに苦情出しとこう。お宅の子なんとかしてください。
そうだったそうだったと、そいつがなにか言おうとしたときホイッスルが鳴った。練習が始まる合図だ。それを聞いた途端、後輩はオレよりもはやく立ち上がって声高に宣言したのだ。


「帰りに迎えに来ますね!」


舌をぺろっと出してからピースをして足早に駆けて行ったよくわからない後輩を、オレは呆然と見送るだけだった。











「あっ先輩いたー!」

「げっ来た」


本当に来たと半ばげっそりする。ちょうど下駄箱で靴を履き替えているときだった。今日はアレンもユウも何故か一緒に帰れないから一人だし、なんだろうこの行動パターンを把握されてる感じ。ふふんと得意気な顔をしてオレの隣にいる後輩はなにもかも分かってますよみたいな、そんな自信が溢れていてちょっとぞわっとした。一緒に自然と帰れてるオレもおかしいかもしれないけど。


「で 聞きたいことあるんですけど、」

「なんさ」

「先輩て彼女いるのに指輪しないのってしょっちゅう別れてるからですか?」


ぐさぁっと刺さった。ナイフで心抉られた感じだった。つい二日前に彼女と別れたばかりだからだ。確かにペアで買ったはいいが別れたあとそれをつけてる訳にもいかないし、どうしていいか分からない指輪の残骸が引き出しの中に溜まっているのは事実だ。だがしかし。ここまで豪速球のストレートで来られると衝撃が強すぎる。


「お前に気遣いって言葉はないんさね」

「キチガイ?」

「の 一歩手前がお前だよ」

「いやん照れます」

「誉めてねーしキモイさ」

「先輩かわいそういじめですか?」

「なんでそうなる!」


ちょっと疲れてきた。オレンジ色に染まって、なんか青春が感じられそうな帰り道なのに疲労しかないのってなんで。仮にも女の子と一緒に帰ってるのにうきうきしない日が来ようとは。


「単刀直入に言いますね」

「うん?」

「先輩の薬指をいただきたいんですけど。きゃっ」

「お前が言うとなんでもホラーに聞こえるんだけど」


ってあれ?聞きようによっては告白されたの?恐る恐るという風に横を見ると、にこにこと気味が悪いくらいに笑う奴がオレの右手をすっと持ち上げた。


「かつてないくらいの大戦争になると思いますが、まあそれくらいの覚悟がないと駄目ですよね」

「話がとんでもなく壮大すぎるんですけど」

「ゆくゆくは左手もいただいちゃうぞ」

「え なに?つまりなんなの?」


要領を得ないオレに痺れを切らしたらしく、どこからか取り出したリングを慣れた動作で「つまりはですね」と言いながらすっと填めた。


「つきあってくださいってことです」





右手の薬指




120309 男前すぎんだろ

企画 finger lips 様 提出
ありがとうございました