はじめての任務with神田ラビ


「おいおい冗談よせやい」


高い高い建物から下を見下ろしてからの独り言。ヒュォオオオと強い風が私の髪を後ろから撫でていく。追い風。ビルの屋上から今し方ラビが落ちて行ったところだ。汽車への飛び乗りといい高いとこからの飛び降りといい エクソシストの任務ってなんでこういうとこでも無駄にハイリスクなんだろう。躊躇しているとゴーレムから声がした。


「おーい、早く降りて来るさー」


「いやです無理ですこんなとこから落ちたら死にます」

「大丈夫大丈夫頭打たなきゃ死なないさ」


「あ、キャッチしてくれる気とか無いんですね」


こんな高さからラビの姿が豆っころに見えるとこまで落ちてくなんて。生きていられる自信が無い。彼はキャッチしてくれないみたいだし。ぶっちゃけ今だって生きている心地なんてしてない。溜め息混じりでラビに話す。


「やっぱり階段から行きます。どうせ帰るだけですし」

「えー、手っ取り早いのに。度胸ねえさ」

「そんな度胸を新人に期待しないで下さい」


きっぱり告げるとブーイングされた。なんと言われようと私は絶対にこんなとこから降りるもんか。あまりにも五月蝿いからゴーレムの通信を切ろうと小さなその物体に手を伸ばした。


「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと行け」


どんっ


「え゛」


ゴーレムに手が届く前に神田の声がして、背中に何かが当たった。うそ もしかして蹴落とされた?なんて思ってる間にも私の両足は着実に、ゆっくりと、アスファルトから離れて、宙に浮いた。心臓が口から飛び出そうだった。
そう言えば神田は後処理が終わってから行くとか言ってた。終わったのかー、って!


「っぎゃあぁあああああ!!!!!」


横暴だー暴君だあああ!!!神田のバーカーー!!!涙が馬鹿みたいにきらきらと煌めきながら流れていく。よし決めた死んだら神田を呪ってやろう。朝起きたときに寝癖でセンター分けになるようにしてやる。決意してから直ぐに重い衝撃が体に走ってああ落ちきったかとぼんやり思いながら 大丈夫さ?と見下ろしてくるラビの顔を見つめた。結局、本当にキャッチしてくれなかったな。心の中で大丈夫じゃねーよと毒づいた。死んでないだけいいけど。運がいいんだなあとポジティブに考えておいた。


「…階段から行くって言ってたのにどういう心境の変化?」

「行こうとしたら神田に蹴り落とされたんです。あんなの有りですか、新人を殺す気ですか」

「あー…、ユウらしいさ」


ああ 体中が痛い。でもこの団服凄いなあ、丈夫に出来てるんだなあ。科学班てすげえや。それでも体がびりびりと麻痺してすぐに動けずにいると、私の目の前になんなく着地した足があった。言わずもがな神田だ。くっそラビといい神田といいコイツら超人かサイボーグか。下から睨みあげる私を見つけて、神田はなにしてんだという顔をしてから、はっきり言った。


「お前って面倒くさい生き物だな」


コムイさん私この人だいっきらいです。




かわいい悪口から初めましょう


100822 執筆
120222 加筆修正