ぴーんぽーん。チャイムが家に鳴り響いた。ゆるゆると気だるそうに瞼があがる。熱い のに ぞくぞくする。頭までずきずき痛む。起き上がるのが億劫だったけれど、携帯を握ったまま時間をかけて玄関へ向かった。扉を開けると悠太がいた。


「こんにちは」

「………あー、どうも」

「だるそうだね」

「まあね」

「ゼリーとか買ってきたから」

「ん ありがと」


リビングに悠太を案内してからソファーに倒れ込むと、ひんやりと心地いい冷たさの手が額に触れた。だいぶ熱あるね、と手の甲がほっぺたにも触れる。気持ちよくてこのまま眠れそうだった。自然に滲み出てくる涙が睫に溜まる。


「おかゆ作るけど、食べられる?」

「…あーんしてくれるなら」

「はいはい」


親指で柔く涙を拭ってくれた悠太は呆れたように笑ってキッチンに向かった。たまには風邪も悪くないなとは思うけど、一緒にご飯作ったり出来ないのが残念だった。ぶっちゃけ私はなにもしないけど、そういうのは見てるのが楽しい。


「ちゃんと毛布羽織っておきなさい」

「相変わらずママだなあ」

「せめてパパにしてよ」

「そういえば祐希は?」

「あー メール来たときは心配してたけど」

「けど?」

「寒いから行きたくないって」

「薄情者め…」


まあいいや。祐希がいるとどうしても遊びたくなってしまうし、それで風邪が移って根に持たれても困る。
暫くして、おかゆの準備を終えた悠太がソファーで横になっていた私と、目線を合わせるために床に座った。冷えピタが額に貼られて、じんじんと熱を帯びていたそこがいくらか冷えていく。悠太は優しく髪を撫でてくれた。その手に安心する。テレビもなにもつけてない部屋はしんと静まり返っていて、でもたまに私の鼻を啜る音だとかが割って入る。悠太といると、時間がゆったりと流れていくし、気持ちが落ち着く。


「ふふふ 悠太の独り占めだー」

「そうだね」

「祐希に自慢してやろ」

「風邪が治ってからね」

「はーい」

「おかゆ、出来るまで時間かかると思うからそれまで寝てな」

「悠太は?」

「ここにいるよ」


それなら安心だ、と閉じかけた目を途中で持ち上げる。どうしたの、首を傾げる悠太の前で熱くなった手をひらひらさせた。


「手 握っててもいい?」

「今日は甘えたですね」

「今日だけですぅ」

「はいはい、おやすみなさい」

「ん おやすみ」


優しく微笑んだ悠太は、私の左手を握ってくれた。すこし冷たい。側にいてくれる安心感からか、私はすぐに意識を落とした。




幸せのオーダーメイド



120207

寂しがった祐希が、いつものメンバーを連れて私の家に押しかけて来た。私が目を覚ましたとき、打って変わって賑やかになっていたのはそれから一時間後のお話。