誰もが寝静まった夜。…まぁ土方さんは起きてるだろうな。溜まりに溜まった書類整理が。



『あ…』



俺が捜してた人物がやっと見つけたと言おうとした口は閉じた

ぼんやりと月を眺めて杯を口に付ける沖田さんが、消えそうで…



「どうしたの」


『! あ、いや…』


「あぁ、一緒に飲む?」


『今回一番隊が夜の巡察っすよね。俺まで飲んだらダメじゃないですか』


「左之さんや新八さんみたいに僕は酔わないよ」


『そうじゃなくて…』



不運にも俺は一番隊沖田総司の小姓に任命されてから毎回、この人を捜しては最終的に俺が巡察に行く

そのパターンに飽きてたんだが今回は違った



「まぁ座りなよ」


『…え?』


「ほらここ」



ぽんぽんと隣を叩いて促されてしまえば、座るしかない。とりあえず1人分の間を空けて座った



「…なんで離れて座るの」


『なんとなくっす』


「まぁいいか」



納得してねぇ感じだったけど許してくれたらしい。てか、なんで座らされたんだ?

色々と考えてると徳利を持たされた



『…なんすかこれ』


「分からない?徳利だよ徳利」


『徳利は分かってますって。なんで渡したんすか』


「鈍いなー。それでも僕の小姓?徳利を渡されたら何をするべき?」


『…猪口に注ぐ』


「うん。言い方が悪いけど正解
じゃあ酌をして」



差し出される猪口に渋々と徳利を傾けて注ぐ。ゆっくりと注がれる酒をじっと見ていたら何やら視線を感じる



「……」


『…なんすか』


「君が女装したらどんな感じかなーって」


『失礼な』



新撰組に女が居たらダメらしい。だから俺は袴を着ている。つか、金を積まれても着物は着ねぇし



「今度着てみてよ」


『一生無理』


「それじゃ斬るしかないね」


『はは。そんな脅しにやられません、ちょ!?何本気になってんだ!?』


「やだなぁ。まだ本気じゃないけど」


『じゃあ柄から手ぇ離せ!』



目が本気だった!
かなりマジで斬ろうとしたぞコイツ!



「そんなに声を上げてたら土方さんに怒られるよ」


『誰のせいだ…』



重い溜息をついてたらまた猪口を差し出されて、酒を注ぐ

またじっと見られ、居心地悪くて目を下へ向けてると沖田さんの右手が俺の頬に伸びる



『っ!?』


「いい顔立ちしてるのに、もったいない」



 





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