現在時刻、20時過ぎ。校内は真っ暗だ。この体育館の電気を消せばこの辺りは真っ暗になるだろう。
「赤司くん、桃井さん見ませんでしたか?」
「いや、俺は見てないよ。どうかしたのか?」
「いえ、何でもないんです。お先に失礼します。」
そう言って、黒子は大して体育館の中を確認せずに俺を信用して、どこかに行ってしまった。まぁ、この俺が桃井の居場所を知らないわけがないのだが。
「ありが、と、赤司、くんっ!」
桃井は体育館の入り口からは死角になっていて見えない所で泣いていた。たまたま、鍵閉めの当番だった俺が発見して今に至るわけだ。ちなみに、俺は桃井の泣き声は聞いたが、姿は見ていないので黒子に嘘をついたことにはならない。
「で、これからどうするんだ?」
「ごめん、邪魔だよね。すぐ、出ていくから。」
「そうじゃない。同じ部活なんだから、これからずっと黒子を避けるなんて無理だ。それをどうするか聞いているんだ。」
「泣いてる理由聞かないの?」
「桃井が黒子にフラれたことを知らない奴はうちのバスケ部にはいないよ。」
言った後に少し言い過ぎたと、思った。更に泣かせてしまうのではないか、と。でも、俺の予想とは裏腹に、桃井は死角から出てきて俺の正面に立った。
「だって!好きなんだもん!フラれてもかまわないと思った。でも、辛いんだもん!」
叫んだ、かと思えばその場に座りこんで泣き出した。かわいいやつめ。俺が近づいて指で涙を拭ってやれば、桃井の顔は素直にこちらを向いた。でも、桃井はまだ泣き止んでおらず度々肩が揺れる。桃井の前にしゃがみこんだら、そのとたん、桃井が俺に抱きついてきた。
「おい。」
「どうしよう、涙止まらない。」
「だからって抱きつくな。」
「だったらどうにかしてよ。」
どうにかするもなにも、お前が俺から離れなければどうにもならないじゃないか。だが、このおいしい役を黒子に渡す必要もない。
「なぁ、桃井。」
話かければ桃井が顔だけこちらに向ける。目尻には未だ涙がたまっている。どこからそんなに水分を作り出しているのか知りたくなるよ。本当に、君には惹かれるよ。
「俺にすればいいじゃないか。」
そう言って桃井のおでこに唇をよせる。それから軽く距離をとって桃井の顔を確認すれば、桃井は目を大きく見開いて固まっていた。
「ほら、涙が止まった。」
はぐれた愛を今こそ叫ぶ
(はぐれた君の愛を)
(俺が繋ぎ止めてあげる。)
わけもなくただ、好き様に提出。
ありがとうございました。
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