「カントクー、鍵俺が閉めとくよ。」
『でも日向くん、まだ着替えてないじゃない。』
「でもカントク、そろそろ帰らないと遅くなるぞ?」
『何言ってんのよ!大会前の練習の時の方が遅いじゃない。』
何を言っても返される、日向は言い返す言葉を考えるが思いつかない。だんまりの日向にリコはおもいきり背中を叩く。
「いって、何するんだよ!」
『何って、背中叩いたのよ。ぼけーっとしてる暇があるならサッサと着替えて来て!』
「わぁーったよ、明るい所で待っとけよ。危ないからな。」
日向が部室の中に入る。リコはそれを確認して部室の前のベンチに座る。
『いっちょまえに照れ隠しなんかしちゃって、可愛いねぇ順平君。』
「中まで聞こえてんぞ、リコ。」
部室の中で顔を赤く染めている日向と外で同じく顔を赤く染めているリコの笑い声が重なった。
越えられない壁
(お互い気づいていても)
(言えないことだってある)
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