体育祭が終わって一段落、かと思えば体育祭前に行われたテストの結果が返ってきた。


「うわー、微妙(笑)智咲は…まぁ一番か。」
「何その言い方。一番じゃなかったらどうするの。」
「それはないよ!」


アタシが一番を取るのは当たり前で。努力なんて誰も認めてくれなくて。まあ、あっこは悪気があって言ってるわけではないんだろうけど。


「智咲先輩!成績返ってきたっスよ!」


一年の校舎の方から走ってくる黄瀬はファンの子なんか完全無視で。手に持っている紙切れはたぶん成績表だろう。


「ほら!全部平均こえました!」
「今までこえてなかったの?」
「はい!一回も!」
「…頑張って教えたつもりだったんだけどな。やっと人並みか。」
「まぁ今までと比べたらいいかな!って考えた方がいんじゃない?」
「あっこ先輩の言う通りっスよ!あ、智咲先輩はどうだったんスか?」


こいつ、いつの間にあっこと仲良くなったのよ。あっこも黄瀬のフォローしてるし。しかも、勝手にアタシの成績表見てるし…!


「え、智咲先輩一番じゃないっスか!おめでとうございます!」
「…ありがとう?」
「何で疑問系なんスか。」
「おめでとうなんて言われたことないし。アタシは一番を取るのが当たり前。それがアタシに対する周りの認識だよ。」


黄瀬だって今は驚いてるけど、きっとすぐに慣れてアタシがトップにいることが当たり前になってしまうんだろう。


「智咲先輩が一番なのが当たり前なのは智咲先輩が頑張ってるからじゃないっスか。」
「…は?」
「そりゃ、もともとの才能とかもあるかもしれないけど、それだけじゃ一番にはなれないっスよ。俺、智咲先輩が勉強頑張ってるの知ってるんスよ!」


こんなこと言ってくれる子がいるとは思ってなかった。黄瀬の予想外の言葉に思わず笑みが溢れる。


「あ、笠松先輩発見!ちょっと行ってくるっス!」


黄瀬はアタシの頭を軽くぽんぽんと叩いてから横を通り過ぎていった。


「智咲、顔真っ赤。」
「うるさい!」


生意気なガキめ!


優等生の憂鬱
(誰かこのうるさい心を)
(黙らせてはくれませんか?)



 




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