「にしも黄瀬君がねー。」
「あっこ五月蝿い。早く部活行けば?」
「今日は休み!」
「じゃあ帰れ。」
「だって、智咲と恋バナしたいし?」
「だから、黄瀬とは何でもないって言ってるじゃん!」


こういう日に限って日誌当番だったりするんだよね。あっこだってさっさと帰ればいいのに、帰らないし。やっと質問攻めの一日が終わったと思えば最後の最後に強敵が残っていた。ラスボスだな。


「でも、黄瀬君は絶対智咲のこと好きだよね、もちろん恋愛感情で!」
「もし黄瀬がアタシを好きだったとしてもアタシは黄瀬のこと好きじゃないから。」
「……諦めてないんだね、笠松君のこと。」


アタシがうなずいたら、そっか。って短い返事が返ってきた。


「でも、笠松君には智咲とは好きの意味が違うって言われたんでしょ?」
「うん。だからさ、笠松はアタシのこと女として見てないんだよ。」
「果たしてそうだろうか。」


あっこが意味深なことを言うから思わず顔を上げた。そしたら、あっこと目があって、その目はにやりと笑っている。


「…なによ。」
「逆の可能性もないわけじゃないでしょ?」
「逆って?」
「智咲が笠松君を男して見てないってこと。」
「馬鹿じゃないの?アタシは笠松のことを一番に考えてきたつもりだし、第一他の男の子とはあんまり話さないし。」
「それだよ。」
「…どれよ。」
「笠松君のことを一番に考えてきたんじゃない。笠松君しか考える対象がいなかっただけ。黄瀬君が入り込んできた今、同じことが言えるわけ?」
「…言えるよ。」
「寝言は寝て言え。じゃ、先に帰るからね!しっかり考えるんだよ!」


あっこはニヤニヤしたまま教室を出て行った。残されたのは、アタシと書きさしの日誌。


過去と未来が背比べ
(どちらにせよ)
(変わったことは変わらない)



 




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -