「じゃ、俺先に行ってるから。どうしても気になるんだったら本人に聞いてみなよ。」


監督には遅れるって言っとくよ、森山先輩はそう言って部室を出ていった。森山先輩いわく、二人が別れたのは笠松先輩がフッたからだと言っていた。でも、この前笠松先輩は俺に向かって、今でも智咲先輩が好きだと言った。矛盾している。おかしい。


「ちわーす、って黄瀬だけか。準備できたんだったら早く体育館行けよ。」


タイミングが良すぎるだろ!そういえば、最近笠松先輩と智咲先輩の話をすることが増えたなぁ。それだけ、智咲先輩のことが好きってことか。


「笠松先輩、質問があるんスけど。」
「ああ、何?」
「……何で智咲先輩と別れたんスか。」
「何でだと思う?」
「分からないから聞いてるんスよ!」


笠松先輩は黙々と着替えを始めて着替え終わってから俺の横に座った。


「お前、借り物競争で何で俺と白川を連れていった?」
「そりゃ、先輩たちのことが好きだからっスよ。」
「それはどういう"好き"?」
「笠松先輩は、憧れというか尊敬というか笠松は先輩として好きで、智咲先輩は……一人の女の子として好きで。」
「そーだよなー。」


そう相づちをうつ笠松先輩の顔はどこか悲しそうで。見つめていたらこっちに苦笑いを見せてきた。


「前にも言ったけど、俺も白川のことが好きだ。この気持ちは変わらない。でも、白川は違う。」
「え、でも智咲先輩も笠松先輩のこと好きなんじゃ…。」
「あいつの好きは俺の好きとは違うんだよ。それに気づいた上でそのまま付き合っていくなんて俺には出来なかった。」
「……?」
「あいつは俺を一人の男として好きになったわけじゃないんだよ。」
「だから別れたんスか?本人に確認もせずに?」
「じゃあお前は耐えれるのかよ!好きな奴から好きって言われても、それは俺が求めてる好きとはかけ離れてるんだよ!それでもお前は俺と白川が両想いだって、付き合うべきだって言うのかよ!」


笠松先輩がこれ程荒れるところは初めて見たかもしれない。俯いてるから顔は見えないけど、きっと難しい顔をしてるんだろう。


「俺は先輩が何と言おうと、先輩のことを恋敵だと思ってます。」
「だから俺は!」


先輩が諦めていても、どんな形であれ智咲先輩が笠松を好きだという事実は変わらない。だからこそ、俺は、アンタを敵視する。


大好きな恋敵
(不戦勝なんて文字は)
(俺の辞書には存在しない)



 




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