「あ、黄瀬。お前借り物でるの?」
「馬鹿だなぁ、男子の借り物なんかろくなことないのに。」


縦割りリレーが終わって白川と話していたら入場する黄瀬が見えた。あいつはどうやらうちの借り物競争を知らないようだ。


「?何かわかんないっスけど、智咲先輩応援してくださいね!」


黄瀬はそう言いながら入場していく、あいつは馬鹿だな。


「黄瀬、目立つからたぶん餌食になるんだろうなー。」
「白川、一緒に走る準備しとけよ。」


白川はまさかー、とかいいながら笑っている。暢気なもんだ。こっちの気も知らないで。


それからすぐ、男子借り物競争が始まった。黄瀬がカードを引いた瞬間固まった。ああ、これは引いたな。


「ほらみろ、こっちに走ってきてる。」
「まじ?もう走れないよ。」
「先輩!一緒に来て下さい!」


黄瀬が近くで叫んだから俺は白川の背中を押した。白川は俺の方を向いていってきます、と意味深な笑顔を見せた。ああ、退場口で待っていてやろうか、そう思って退場口に足を向けたら、再び黄瀬の声が聞こえた。


「ちょ、笠松先輩?!行きますよ!」
「はぁ?お前何言ってんだよ。」
「俺には、どっちかなんて選べないっス!」


大好きな人
(お前が握る小さな紙に)
(はっきり書かれていた文字)



 




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