「笠松先輩、ちょっといいですか?」


部活が終わってから片付けをしてたらいきなり黄瀬に呼び出された。


「あぁ?まあいいけど。場所変えるか?」


出来れば、そう返ってきたから俺は黄瀬を連れて体育館の外に出た。まだ片付け中だからか外に人はいない。


「で、話って何?」
「…智咲先輩のことなんですけど。」
「白川?ああ、テスト赤点じゃなくてよかったな。」
「はい!じゃなくて!」
「はあ?じゃあ何だよ。」
「笠松先輩と智咲先輩が付き合ってたってことっスよ!」


何で黄瀬が知ってるんだ。俺たちが付き合ってたのは高1までだ。もう2年も前のこと。森山あたりから聞いたのか?


「だから何だよ。もう昔の話だろ。」
「先輩からしたら昔のことかもしれないっスけど、智咲先輩はそうじゃないかも知れないじゃないっスか。」
「…俺には関係ないだろ。」
「気がないなら、引いて下さい。じゃないと、智咲先輩が可哀想っス。」


引いて下さいと言われても、そもそも俺は白川にアタックした覚えはない。あからさまに言ってもダメなのはわかりきっているし、だいたい俺は今のこの関係で満足している。だから、アタックする理由がないのだ。


「先輩も何か言ってくださいよ。俺、ここに入学して智咲先輩のこと好きになって頑張ってアプローチしたつもりっス。でも、智咲先輩は俺のことなんか後輩としか思ってないっぽいし。俺と笠松先輩じゃ、笠松先輩のほうがいいに決まってるじゃないっスか!」


この瞬間俺の中で何がキレた気がした。


「好き勝手言うのも大概にしろよ。」
「っ!」
「お前に何がわかる?まだ会って数ヶ月のお前に智咲のことを言われる筋合いはない。だいたい引けだの何だの言う暇があるんだったら自分で落とす方法くらい考えろ。最後にひとつ。お前が何を勘違いしているかはしらないがな、俺は今でも智咲のことが好きだ。」


しばらくの間、黄瀬の驚いた顔を忘れることはないだろう。


恋愛事情
(好きに種類があることを)
(どうして認めないんだろうか)



 




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