『許さないなんて言ってない。』
「だが、現にテメーは俺を許してねーだろうが!」
『だって跡部が悪いんだもん!』
「チッ、話が噛み合わねぇ…」
放課後の部室、
「また始まった」と言わんばかりの視線も気にせず、二人はケンカを続ける。
レギュラー陣に至っては、ケンカが終わらないことがわかっているのか、「お先にー」「戸締まり頼むで、」など、軽く声をかけ部室から出ていく。
その結果部室には、跡部となまえだけが残った。
「おい、」
『……………。』
「くそっ、…………なまえ!」
『なに、よっ!』
返事はするものの、なまえが跡部の方を向く気配はない。
「泣いている理由を話せ、」
『泣いてっなん、かないし!』
「じゃあ、今現在お前の目から出てるものは何だ?」
『…汗?』
なまえの返事に跡部は大袈裟にため息をつく。
そして、なまえに近づき顔を覗こうとするが、嫌がられそれすらさせてくれない。
「また、ファンの奴らに何かされたのか?」
びく、なまえの肩が微かに動く。しかしなまえは横に首を振る。
「図星か、」
『何もされてない!もし、されてたとしても悪いのは跡部じゃない!』
「さっき、お前は俺が悪いと言っただろうが。」
『……だって、しょうがないじゃん!アタシだってどうすればいいかわかんないん、っえ?』
なまえがしゃべり終わる前に、跡部がなまえを抱きしめた。
『跡部?』
「いいか、よく聞け。」
跡部は一度なまえを離しきちんと、向き合う。なまえは目を反らそうとするが、顎に添えられてある跡部の手がそうさせてくれない。
「悪かった、今回は俺の責任だ。」
『そんなこと…!』
「あるんだよ、なまえは悪くない。…辛かったか?」
跡部の優しい声に再び涙が溢れる。胸を貸してくれる彼は本当に優しい。
「これだけは、忘れないでほしい…」
耳に息がかかる、彼の低音は心地よく、涙はもう止められない。
好きすぎて、愛しすぎて、
(お前がいない世界なら)
(生きる意味はないじゃないか、)
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