幸男くんが帰ってこない。まだ、話しているのかな?正直私もお腹すいた。そんなことを考えながらボーっとしていたら、コンビニ組が帰ってきた。


「紗夜さん、これ良かったらどうぞ!」


さっき幸男くんに藤谷と呼ばれていた少年が駆け寄ってきて私にサンドイッチを突きだしてきた。


「いいよ、悪いし。私はすぐ帰るし。藤谷くんが食べればいいよ。」
「いや、俺の自己満なんでもらってもらわないと困ります。」


えらく真剣な顔で言ってくるから、なんだが可笑しくて。ありがたくもらって皆で昼食タイムを始めることにした。








「そういえば、紗夜さんて森山先生の後輩なんですか?」


ご飯を食べていたら不意に質問を投げ掛けられた。この質問のお陰で今まで個々に話していた子達も私に注目する。そんなに大層な話はできないんだけどなぁ…。


「森山先輩は大学の時の先輩だよ。学部が一緒だったんだよね。あ、学年は私が下だけど。どうして?」
「森山先生のこと先輩呼びだったから気になったんだけです。ということは笠松先生も先輩ですよね?」
「そうだよ。幸男くんとは森山先輩経由で知り合ったの。」
「じゃあ、森山先生は恋のキューピットじゃん。」
「似合う、似合う(笑)」



…恋のキューピットか。生徒たちには失礼だけど、私は似合わないと思うけどなぁ。どちらかといえば策士だし。的外れなことが多いけど。


「はいはい!俺も質問していい?」


藤谷くんが勢いよく手をあげた。高校生って元気だなぁなんて考えながら、いいよと返事をしたら藤谷くんてその周りの子達がニヤリと笑ったのが見えた。


「紗夜さんって笠松先生のどこが好きなの?」


むせた。いや、この質問が来るかもしれないとは思っていたけどストレートすぎないかい、藤谷くん…!


「笠松先生に聞いても答えてくれないんですよねー。」


そりゃそうだ。幸男くんは元々この手の話が苦手なのだ。私にだってあまり言ってはくれない。わざわざネタにされるのが分かっていて話さないだろう。私もやんわり断ろうと思ったけど、この人数(しかも運動部男子たち)に見つめられたら断れない。まあ、本人が聞いているわけでもないし、少しくらいならいいか。


「そうだなぁ…、優しいとことか、何だかんだ言って私のこと考えてくれるとことか。あと、自分には人一倍厳しいとこは好きなところでもあるし憧れてるところでもあるかな。」


話していると皆の視線が私ではなく、私の後ろであることに気づく。藤谷くんあたりもさっきより一層ニヤニヤしてるし。まさかと思って振り返ったら案の定そこには幸男くんがいた。


「…どこから聞いてたの?」
「…………」
「笠松先生、俺が質問したときにはもう後ろにいましたよ。」
「誰か止めてくれてもいいじゃない…!」


こんなときにチームワーク発揮しなくてもいいよ。ああもう、恥ずかしくて幸男くんが見れない!幸男くんも私と同じ気持ちだったのかしばらくは固まっていたけど、しばらくして私の方に歩み寄ってきた。


「紗夜、正門まで送るよ。」
「笠松先生やっさしー!」
「藤谷、お前午後練始める前に外周な。」


私と彼と乙女心
(お互いの気持ちは)
(言わないと分からないよ。)




 


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