「ただいま!幸男くん!」


喫茶店を出て、急いで家に帰ってきた。家の玄関を開けて、思わず叫んだけど幸男くんの声はない。かわりに、美味しそうな匂いがしてくる。靴を脱いでキッチンに向かうと、そこには珍しく包丁を握っている幸男くんがいた。私が帰って来たことには気づいてないようだ。


「幸男くん!帰ってきたよ!」
「っ?!あぶねーだろ!」


気づかれてないことをいいことに後ろから抱きついたら、怒られた。まぁ、包丁持ってる人脅かしたらダメだよね…反省はしてないけど!


「どうだった?」
「んー、まぁ結論を言うと、私も森山先輩も幸男くんのこと大好きだよ!って感じ?」
「はぁ?!どう話したらそういう結論になるんだ!紗夜はともかく森山は気持ち悪いわ!」


「えー」なんて言いながら話を誤魔化す。だってさ?森山先輩とのごたごたはなくなったわけだし、森山先輩自身もこの話はしてほしくなさそうだったし。


「でも、森山先輩に幸男くんは譲れない!ってきちんと言ったよ?絶対私の方が幸男くん好きだからね!」
「…お前今日はやけに素直なんだな。」
「そういう気分なんじゃない?」
「どんな気分だよ。」


そういって幸男くんが笑うから、私も笑う。そしたら幸男くんの腰にまわしていた私の手を軽く叩くから放すと、幸男くんは手を洗ってからこっちに向きなおした。


「俺はさ…。森山みたいに女扱いが上手いわけでもないし、紗夜に何か特別なことをしてあげられるわけでもない。黄瀬みたいにカッコよくて何でもこなせるほど器用でもない。いちいちヤキモチも妬くし、カッコ悪いところもある。それでも、俺を選んでくれて…俺を好きになってくれてありがとう。」


そういって私を抱きしめる幸男くんの腕はとても温かくて心地よかった。私こそ、そう言いたかったけど涙のせいで何も言えなくて、でも伝えたくて首を縦に振る。そしたら、幸男くんは私の頭を軽く撫でてキスしてくれた。


私は大学で数多くいる人の中から幸男と出会って幸男くんを好きになった。気持ちが通じ合うということは、とても幸せで毎日が楽しかった。でも、私たちが幸せな分不幸な人もいるわけで、そんな気持ち交差して今の私があることを私は学んだ。だから私は、今のこの、幸福な時間を精一杯堪能しようと思う。


幸福時間
(わたしと彼の)(特別な時間)





 


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