「思い出した?」
「…はい。」


森山先輩は申し訳なさそうに笑ってる。ああ、確かにそんなことを言った気がする。


「笠松には、紗夜ちゃん抱きしめさせてもらいました!なんて言ったら怒られそうだし、内容的にちょっと気恥ずかしかったから言わなかったんだ。今になって掘り返されるとは思ってなかったけど。まあ、結局俺はずっと紗夜ちゃんのこと好きって言い続けたわけだし、普通に考えたら嫌われるレベルだから避けられてるのは無理ないと思ってたんだけど。てか、笠松はやっぱり俺が紗夜ちゃんのこと好きなのは気づいてなかったのかぁ。紗夜ちゃん、あの頃笠松に俺に告白されてるとか言ってないでしょ?」
「あの頃は気付いてなかったんじゃないですか?この前白状しましたけど。」
「だよなぁ。でも、あいついい奴なんだよなぁ。厳しいけど、優しいし頼りになるし、今も絶対家で紗夜ちゃんのこと心配してるな。俺が女だったら惚れるわ。」
「譲りませんけどね。」
「厳しいなぁ…。」


森山先輩が笑う。さっきまでとは違う、笑顔。昔の、出会ってすぐの森山先輩の笑顔だ。


「森山先輩、仲直りしましょう!別に喧嘩してた訳ではないですけど、仲直り!」
「ははっ…敵わないなぁ、紗夜ちゃんには。」


お互い、手を出して握り合う。握手。


「きっと、笠松が心配してるから。早く帰ってあげて?」
「はい!ありがとうございます!ではまた!」


伝票を持って席を立とうとしたら、俺に奢らせて?と言われた。今回は私が誘ったわけだし、申し訳ないといったけど、森山先輩は頑固だから言うことなんてきいてくれない。素直にご馳走さまですと言ったら、それでいいよ。俺はまだここにいるから。と、言われたので先に帰ることにした。早く、早く幸男くんに会いたい。







「もしもし、あー、小堀?今から出てこれる?駅前の喫茶店。えー、まぁ、うん。俺の失恋傷心会。暇そうなら黄瀬とか中村とか早川あたりも巻き込もう。笠松?あいつはいいんだよ、現在幸せ満喫中だから。」


幸福と不幸
(お前らが幸せなら)
(それでもいい…なんてな。)



 


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