がちゃん、と玄関が閉まる音が聞こえる。ああ、黄瀬さん帰ったんだなぁ。玄関の鍵閉めてこようか。さすがに、幸男くんと沈黙のままじゃ気まずいし。そう思って立ち去ろうとしたら、幸男くんが自分の隣をぽんぽんと叩いた。座れってことか。


「なぁ、森山と何があったんだよ。」
「さっきも言ったけど、告白されたの。」
「それから?」
「それだけだよ、ただの先輩だもん。」


そう言ったら、横で溜め息が聞こえてきた。私に聞こえるようにわざとらしく盛大な溜め息が。


「森山はそれくらいで、お前のことを気にするようなやつじゃない。絶対何かあったはずだ。」


幸男くんの声が、不意に耳元まで近づく。そのまま押し倒されるのかと思って目をつぶったら、おでこに軽い痛みが走る。


「"しつこく"告白されたんだろ?その言葉には何かある。」
「…何で、そう思うの?」
「ただの後輩って感じには見えなかったから。生憎、森山とは付き合いが長いんだよ。」


さすがだ、よく見てる。隠してたのは事実だしバレるのは時間の問題だとは思っていたけど、でも、これは私の問題だから。


「隠してたことは謝る。でも、記憶が断片的で思い出せないこともあるの。確かに私は、森山先輩のことを避けてたし、森山先輩も私には少し気を使ってるところがあるけど、これは私の問題だから。…自分で解決したいの。わがままだってわかってるけど、でも…!」
「…俺が何を言ってもどうせ、自分でやるんだろ?口出しはしない、約束する。だから、聞かせてくれないか?何があったのか。」


「……うん。」


さあ、語ろうか。
(心の底に仕舞った)
(思い出したくない過去を。)



 


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