火照る顔を手で隠しながら目的もないのにひたすら走る。好きな人にあんなこと言われたら平常心でいられるわけないじゃない!落ち着け私の心臓…!


走り疲れて足を止めたら心臓の音がうるさいくらいに聞こえる。走ったせいか、あの言葉のせいか。右手には先生に渡すはずだった資料。しょうがない、後から渡しに行こう。そう思って再び足を動かそうとしたら不意に女子生徒の会話が聞こえてきた。


「バスケ部、準備じゃなくて練習してるらしいよ!」
「ウソ?!黄瀬くん観に行きたい!でも、準備抜けたら怒られるし。」
「そういえばさ、森山に好きな人出来たって話聞いた?」
「どうせ、『好きな人はこの世の女の子!』とか言うんじゃないの?」
「それがさ、この前、一年の可愛い子の告白断ったらしいの!」
「あの森山が?じゃあよっぽど本気の恋ってこと?」
「珍しいよねー。そのうち槍でも降ってくるんじゃない?」


段ボールを抱えた二人組が私の横を通り過ぎていく。ああ、森山くん好きな人いたんだ。だったら、あんな思わせ振りな言動はやめて欲しい。私なんか無視してその子み向かって一直線にアタックすればいい。どうして、私にかまったの。


「…準備、しないと」


期待値と反比例
(私と貴方の関係は)
(数式なんかじゃ解けやしない)



 



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テーマ「人外ファンタジー」
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