「こら、顔動かさないで。化粧しにくい。」
「委員長ベルトキツくない?てか、足細いね。もうちょっとスカート短くしてもいいかなぁ…。」
文化祭の開祭宣言をした後、森山のところに行こうとしたらクラスの女子たちに見事に捕まりました。
「森山とまわるんでしょ?うんと可愛くするからね!」
「てか、うちのクラスって普通の喫茶じゃなかったの?何で衣装がメイドなの…!」
私がいるのはうちのクラスの控え室で今は女子の更衣時間だ。今から当番の子達がメイド服に着替えるのを横目に私はやられるがままだ。
「細かいことは気にしない!明日は委員長にも着てもらうからね!…ほら、完成!」
鏡の前まで押され、自分の姿を見る。膝が見えるスカート丈、薄く化粧をされた顔、軽く巻かれた髪。いつもの自分とは違い過ぎて自分が自分じゃないみたい。
「ほら、いつまでも自分見つめてないで、行ってこい!」
皆の方を見たら、頑張ってと声をかけてくれた。私を応援してくれている。その期待に答えたい。と言っても、いきなりこの姿で現れて引かれたりしないかな?そうは思ったけど迷っても仕方がない。控え室のドアを開けて廊下に出たら、壁にもたれている森山くんがいた。もしかして、待たせてた?
「ごめん森山くん!結構待った?」
「いや、そんなに待ってない…よ…。」
私の姿を上から下まで見ていく。やっぱり私には似合わないかな?調子のってるって笑われる?
「どうしたの、その格好。」
「えっと、クラスの子が、真面目っ子卒業しろって…。変かな?」
「いや、変じゃないけど…。」
けど?続きが気になって森山くんの方を見たら、盛大なため息をつかれた。やっぱり、ダメだったのかな。
「けど…何?」
「こんな可愛い子が隣にいたら、落ち着いていられないよ。」
さぁ、舞台は整った
(私と貴方の鼓動は)
(きっと同じスピード。)
←→
←