週に二、三回。俺は病院に通うのが習慣になってしまっていた。特に話すことがあるわけではない。しいて言うならば、会いたいからだ。


いつもと同じようにエレベーターで五階まで上がって512号室まで歩く。スライド式のドアを開けると、明るい声で名前が呼ばれる…のだが。


「……いない。」


いつもならベットの上で、雑誌を読んだりTV観たりしてるのだが、今日は見当たらない。また脱走でもしたのだろうか。病室の中に誰もいないことを確認して外に出たら、何度か見たことがある看護師さんに会った。


「あら、美知ちゃんの彼氏さん?今、美知ちゃん検査に行ってるから十分くらいしたら帰ってくると思うわ。」
「え、ああ、ありがとうございます。でも俺、彼氏とかそういうのじゃないですよ。」
「え、そうなの?最近美知ちゃんが楽しそうに貴方のこと話すから。ごめんなさいね。その制服、海常高校よね?よければ名前、教えてくれない?」
「笠松幸男、二年っす。」
「笠松くん、ね。ねぇ笠松くん。確認してもいいかしら?」


どこか妖しげで、でも真剣な表情をしている看護師さんの言葉に軽く頷いた。


「笠松くんがどこまで知っているかは知らないけど、美知ちゃんは薬だけではどうにもならない、残りの命だって長いとは言い切れない。わかってる?」


病気に関してはイマイチわからないけど、寿命に関しては薄々気がついていた。つい先日「死にたくない」という発言も聞いたし。


「それなりには。」
「そういった患者にはね、生きたいという気持ちが大切なの。そりゃ、生きたいと思って生きられるなら医者はいらない訳だし、気持ちがすべてとは言わないわ。でも、今の美知ちゃんにとっての生きる理由は確実に笠松くん、貴方よ。そこで、貴方の気持ちが確認したいの。生半可な気持ちで友達やってるようなら、ここには来ない方がいい。」


生半可な気持ち?友達?冗談じゃない。


「俺は美知さんと友達になりたくてここに来てるわけじゃない。かといって恋人になりたいわけでもないけど。でも、俺は美知さんが好きなんだ。美知さんが生きる為の役にたてるのならなんでもしたい。……少しでも長く、美知さんと一緒にいたい。」


そういったら看護師さんは「ならよかった。」とだけ言ってどこかに行ってしまった。さて俺はどこで時間を潰そうか、主がいない病室に居座るのも気が引ける。そういやエレベーターの近くに自販機あったな。そこで時間潰すか。と思って振り返ろうとしたら、後ろからいきなり抱きつかれた。いや、飛びつかれたという方が表現的には正しいかもしれない。


「アタシも幸男くんのこと好きだよ、大好き!」
「え、美知さん?!今の話聞いてたのかよ!てか、放せ!」
「いーやーだー!」


嬉しそうに笑う君は
(どこか儚げで)
(綺麗だった)



 




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