「また来てくれるって信じてたよ!」
「美知さんが来いって言ったんだろ。」


この前はあんなこと言われて正直戸惑ったけど、答えなんか期待してないからいらないと言われた。変わりに名前で呼ぶことを強要されたけど。ちなみに、どうして俺なんですかと聞いてみたら何でだろうね、ってはぐらかされた。


「幸男くん、今日部活は?」
「今日は午前中だけ。まぁI・H近いし今から自主練するつもりだけど。」
「いいなぁ、アタシも動き回りたい!」
「俺、何部か言った覚えないけど。」
「バスケ部でしょ?」
「なっ、んで知って…?」


どうやら、俺の反応が予想外だったらしく。思いっきり笑われた。ついでに背中を叩かれた。


「こっから、バスケコート見えるんだよね。ストバスって言うのかな?詳しくないから分かんないけど。幸男くん、前からあそこで練習してたじゃん?」
「じゃあ、美知さんは、あの雨の日の前から俺のこと知ってたのか?」
「そうだよー。まさか会えるなんて夢にも思ってなかった。いつも、かっこよくバスケするなーと思ってた人に会えるなんてさ!アタシの中では芸能人みたいな感じだったんだから!」


俺はそんなにうまくない。美知さんに誉めてもらえるほどのプレーなんて出来ていないはずだ。でも、美知さんに誉められるのは心地よくて。


「俺はそんな、大層な人間じゃない。」
「そんなことないよ。アタシ、幸男くんを知るまではいつ死んでも悔いはないかなって思ってた。でも、バスケする幸男くんを見つけて、せめて会ってから死にたいって思った。でも、実際に会ってみたらさ。死にたくないって思っちゃったんだよ!」


静かな病室に美知さんの声が響く。たぶん、きっと、美知さんは死ぬのが怖いんだろうな。その恐怖と小さいころから戦ってきて。やっとけじめがつけたのに、俺という存在を知ってしまった。


「ねぇ、美知さん?」
「……何?」
「俺に出来ることはありますか?」
「出来、ること?」
「はい。俺は美知さんがどんな病気で残された時間がどれくらいなのか知らない。でも、俺は美知さんのそんな苦しそうな顔を見るためにここに来てるんじゃないんだよ。…俺は、美知さんの笑顔が好きだから。」


頬を赤く染めて笑う美知さんを見て、彼女のことが好きだと確信した。


愛してるとは言えなくて
(いつか消えてしまう君を)
(心にたくさん刻み込んで、)



 




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