「Ah? 名前じゃねぇか、何してんだ」
「あ、政宗さん。 何って、てるてる坊主を作ってるんですよ」
そういって名前はほら、と白い布でつくられたてるてる坊主を差し出した。
「What?てるてる坊主?」
「あれ、政宗さんは知らないんですか? この時代にはまだ無かったんですかねぇ」
小首を傾げて名前は政宗に尋ねるが、そんなことを聞かれても実際政宗には分からない。
それよりも、名前の手の中にある『てるてる坊主』というものが気になって仕方が無かった。
「で、そのてるてる坊主ってのはどうするんだ?」
「これは、この後顔を描いて、紐で吊るすんです。晴れますようにっていうおまじないなんですよ」
「最近雨が続いてるからな……」
今日もざあざあと雨は降っている。梅雨時だから仕方が無いとは分かっていてもじめじめとした空気は憂鬱になる。
「そうなんですよ、雨が降ってるとお洗濯も出来ないですし。 早く晴れて欲しくって」
いいながら、名前は筆をとるとなれた手つきでさらさらと、てるてる坊主の顔を描き始めた。
楽しそうに筆を滑らせる名前の隣に腰掛けて、政宗は既に作り終えているてるてる坊主をひょいと取り上げた。
「hey,名前 コレは俺のつもりか?」
政宗の手に握られているてるてる坊主の右目には眼帯が描かれてある。
「あ、わかっちゃいました? せっかくだから皆さんのを作ろうと思いまして」
えへへ、と照れたように笑いながら、「こっちは小十郎さんなんです」ともうひとつのてるてる坊主を差し出した。
名前からそれを受け取って、政宗はまじまじとそれを見つめた。
「It is well-made. 小十郎にソックリだぜ」
「ですよね! 自分でも自信作だなぁって思ってるんです」
「するとコッチは成実か?」
「はい! それでこれが綱元さんですよ」
名前がたった今作り上げたてるてる坊主を指して言う。
それらのてるてる坊主は全て、とても上手に出来ていた。
てるてる坊主に紐を括り付けて、縁側へと吊るすとなんとも微笑ましい光景が広がる。
「雨、やむといいですね」
「そうだな。 止んだらどっか行くか」
「あ、ならいつきちゃんのトコに行きたいです!」
「そりゃnice ideaだ」
「ならてるてる政宗さんたちには頑張ってもらわないといけませんね!」
「そりゃ責任重大だ」
肩をすくめる政宗を見て、名前はくすくすと笑いを漏らす。
そのとき、スパン!と勢い良く襖が開いて、憤怒の形相の小十郎が入ってきた。
「政宗様! まだ執務が終わってはおりませぬぞ!」
「チッ、仕方ねぇな」
「あ、お仕事頑張ってくださいねー」
小十郎に半ば引きずられながら部屋を後にする政宗と、政宗を半ば引きずりながらくどくどと小言を並べている小十郎。
その後姿があまりにも面白くて名前は思わず噴出してしまったのだった。
(charm)