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( 平行線を辿る日々 )


空野葵は松風天馬が好きだ。それはオレたちの中で暗黙かつ、周知の事実であった。誰も何も言わないけど、信助くん辺りはどこか抜けてるところがあるからよく分からないけどもみんな薄々そのことに気付いている。そういうことに興味無さそうな剣城くんも知ってるくらいだから、恐らく先輩たちも気付いてる人は気付いてるんだろう。
最も、皮肉にも彼女の想い人にその想いは届いていないどころか気付かれてもいないみたいだけど。



「あのさ、なんで空野さんって天馬くんが好きなわけ?」
「…そうやってデリカシーのないこと言ってると狩屋くん、女の子にモテないよ」
「別にモテなくても構わないし」



恐らく彼女の中でオレの株は下がっただろう。元々どれくらいの好感度を抱かれていたかは知らないし、知りたいような、知りたくないような。そんな感じだから敢えて深くは考えなかったが天馬くんが好きという件を否定はしなかった。
彼女がそれに気付いているのかどうかもきっとまた別の話なんだろう。狩屋くんって黙ってればモテるだろうに、などと失礼極まりない一人言をブツクサ言いながら話が脱線している。意図してやっているのか天然なのか。



「空野さん、天馬くんは諦めた方がいいんじゃない?」
「どうして狩屋くんがそんなこと言うの?」



少しムッとした態度を取られた。あーあ、初めてだよ。自分のこの性格恨んだのは。さっきから株は下がりっぱなしだ。



「別に、もっと空野さんを想ってくれる人がいるじゃないかなって思っただけ」
「…そんな人、いるのかなあ」
「…いるよ。絶対に、オレ、勘は鋭いから」




平行線をたどる日々



こんなとき、オレにしたらいいんじゃない?とか言えればなあ