05


そう言えば――
白ひげの船にはどうやって乗せてもらえるのだろう?

基本的なところに立ち返ってヤヒロは思った。
ミホークがシャンクスと酒を酌み交わすシーンがあったことは知っている。それなりに話ができる間柄なのだろう。しかし、ミホークと白ひげが話をするシーンなんて皆無だ。

『進路変更! 白ひげ!!』

頼んでおいて今更なんだけどと思いながらヤヒロはチラリとミホークを窺った。その視線に気付いたミホークがヤヒロに目を向けてお互いの視線がぶつかる。

「……何だ?」
「ミホークは白ひげと話ができるのかな〜とか思って……」
「簡単なことだ」
「え? そうなの?」
「不死鳥に話を通せば容易なことだ」
「へ?」

予想外の返答にヤヒロは眉間に皺を寄せた。

「どう説明するつもりでいるんだ?」
「何、簡単に上辺だけの話をすれば良い」
「え、マジでそれでいけんの?」
「信用しろ」
「……はい」

ヤヒロの胸中に『不安』の二文字が渦巻いた。
それから数日後――
船から距離はあるが目的とする船の姿が広大な大海原の中に忽然と姿を現した。

「あれが白ひげの船だ」
「え……、ここから大分距離があるのにあのでかさって、完全に遠近法無視の域じゃん」
「千六百人を超える大所帯だ。あれぐらいでかくなくてはな。それに、白ひげ自身も巨体な男だ。それ相応に大きな帆船で無くては窮屈だろう」

ヤヒロは白ひげの姿を思い起こした。しかし、白ひげ海賊団の記憶が本当に薄ら過ぎて身体の大きさの対比が上手くいかない。眉間に自然と皺が寄って「うーん?」と唸る。

「思い出せなくとも構わんだろう。どうせ直ぐに会える」
「いや、一応心の準備を」
「ふっ、お前にそんなものは必要なかろう」
「毎回思うんだけど、本当にあんたは私を何だと思ってんだ?」
「夜叉鬼神の七代目だろう?」
「そ、そんなの記憶してたのか!?」
「無人島で見せた冷酷な眼光はなかなかのものだったがな」

片眉を上げて微笑を浮かべるミホークに顔を顰めたヤヒロは、「まァ…」と呟いて頭をかりかりと掻いた。オドオドするような人間で無いことは確かだけど――

「鷹の目には負けるかと」
「そうでもない」
「おい」

嘘吐くな。笑ってんじゃねェか!と、ヤヒロは隣に立つミホークを睨んだ。ミホークはヤヒロの頭にポンッと手を置いた。

「!?」

ミホークの行動に驚いたヤヒロは慌ててミホークの手を退けようとしたが、ヤヒロの手が触れる前にその手は退けられた。ミホークを見上げたヤヒロは、ミホークの目が海に向けられていることに気付いた。

「迎えが来たな」
「迎え?」

ミホークの視線の先を辿るようにして目を向けると、空の深い青と異なる明るめの青い炎を纏う鳥がいた。ヤヒロでも見惚れてしまう程に、あまりにも綺麗な姿をしている。そして、その鳥が徐々に近付いて来ていることにヤヒロは気付いた。

「あの鳥って」
「お前の背中にいるだろう?」
「まさか、」

背中にいるのは赤い龍。そして、青い不死鳥。つまり――

「悪魔の実の能力者。白ひげ海賊団1番隊隊長不死鳥マルコだ。白ひげ海賊団のNO.2で取り纏め役でもある白ひげの右腕だ」

ミホークが告げるとヤヒロは呆然として空を見上げた。上空を旋回して高度を下げた不死鳥が漸く船縁に着地すると同時にボボッと爆ぜる音が小さく鳴って人へと姿を変えた。

「やっぱり鷹の目のミホークかい」

南国フルーツを思い起こさせる金髪の男は、気だるげにしながらもミホークを真っ直ぐ見据えて警戒している。そりゃそうだろうなと思いながらヤヒロは――おお、本物のマルコだ――と、ちょっとした感動を覚えていた。

「何の用だい? オヤジの首を取りに来たってんならおれが今ここで相手になるよい」

睨み付けるマルコに対して表情一つ変わる事無くミホークは「届け物だ」と言った。

「何…、届け物?」

片眉を上げるマルコに「そこの女をお前達の船に乗せてやれ」とミホークは視線をヤヒロに移した。それに釣られるようにマルコはヤヒロに目を向けた。
苦笑を浮かべながら軽く頭を下げるヤヒロに眉を顰めたマルコは視線をミホークに戻した。

「この女を船に乗せろって……どういうことだ?」
「赤髪の元へ連れて行こうとしたが本人の希望でな」
「希望だって?」

怪訝な顔をしたマルコにミホークは続けた。「ヤヒロの実力はおれが保証する。性格も至って海賊向きだ」――と。

「とりあえず白ひげの元にこの女を連れて行け。乗せるかどうかは白ひげが判断するだろう」
「オヤジが乗せねェって決めたらどうする気だよい」
「あァ、その心配は無い。恐らく白ひげはヤヒロを気に入る」
「鷹の目……、何を企んでやがる?」
「実力のある人間を紹介しているだけだ。悪く無い話だと思うがな」

ミホークとマルコの間にバチバチと音を発する火花が散っているように見えたヤヒロは、二人の間に立って居た堪れない気持ちになっていた。本当に上辺だけの説明に内心ハラハラしている。会話が終わるのを黙って待つしかない。

「世界一の大剣豪であるあんたが推す程だ。余程強い女だってェのは理解するが、女を海賊船に乗せるなんてのは不吉以外無ェよい」
「白ひげの船には確か女が乗っているはずだが?」
「ナースは別だ」
「同じだと思うがな。それと言っておくが、ヤヒロはその辺の女とは違う。特に不死鳥、お前にとっては尚更な」
「そりゃあ…どういうことだ?」

ミホークはヤヒロの腕を引っ張ってマルコに対して背中を向けさせた。そして、「こんな衣服を悠然と纏い、たった一人で海賊相手に啖呵を切って退散させる程の女だ」と言った。

「赤い龍に…青い…」
「不死鳥だ」
「――ッ!」

ヤヒロの特攻服に描かれた青い不死鳥に目を奪われたマルコは絶句して言葉を飲み込んだ。

「赤髪に連れて行こうとした理由はこの赤い龍にある。だがヤヒロは白ひげを選んだ」
「ッ……」

思いもしないことで心が激しく揺さぶられる感覚に襲われたマルコは、得心のいかないような顔をしてヤヒロに目を向けた。

「お、お前……何で…理由は何だ?」
「え?」
「理由を教えろよい」
「理由……」

未来を変えに等、言えるわけがない。マルコの質問にどう答えるかヤヒロが迷っていると「簡単なことだ」とミホークが代わりに口を開いた。

「赤髪と白ひげのどちらに興味があったか、ただそれだけだ」
「……」

本当に上辺だけの説明で押し通すのか……。と、真実を語らず事を進めようとするミホークに心の底からヤヒロは感謝した。――と同時に、この世界で最も頼れる味方でいてくれるのだと確信して安堵する。仲間ではない。父のような、兄のような、そんな雰囲気をミホークから感じ取っていた。

「わかった……。オヤジの元へ連れて行く」

溜息を吐いたマルコが折れた形で了承するとミホークは僅かに口角を上げた。そして――

「ヤヒロ」
「え?」
「おれはここまでだ」

別れを口にするミホークにヤヒロは目を丸くした。

「鷹の目、お前は来ねェのか?」
「お前を信用してヤヒロを託す。それで十分だろう?」
「ちょっ、ミホーク!?」
「安心しろヤヒロ。この男は不義はせん。それに、白ひげは理解ある男だ」

ミホークはそう告げるとマルコに目を向けた。

「不死鳥、連れて行け」
「……わかったよい」

頷いたマルコは、ヤヒロの側に降り立つと背中を向けて屈んだ。

「おれの背中に捕まれ。船まで飛んで行くからよい」
「あ、あァ」

マルコに言われたままヤヒロは手を伸ばした。だがその前に――と、その手を止めてミホークに顔を向けた。

「ミホーク! 大変お世話になりました! この恩は絶対に忘れません! 本当にありがとうございました!」

ヤヒロは声を張ってミホークに頭を下げた。 ミホークはそれに微笑を浮かべると一言述べた。

「また会おう」

その言葉に顔を上げたヤヒロは、満面の笑みを浮かべて「はい!」と返事をした。そして、マルコの背中に捕まるとマルコが不死鳥へと化して空高く舞い上がり白ひげの船へと向かった。それを見送ったミホークは、白ひげの船から離れる航路に変えて船を走らせたのだった。

「鷹の目があんな風に笑うなんて思わなかったよい」
「結構、優しい人だったよ。あ、ヤヒロです。マジマヤヒロって名前です。宜しく」
「おれはマルコだよい」

小さく笑ったヤヒロはマルコの背中に顔をうずくめた。涙が浮かび上がって視界が歪れたからだ。背中に滴が落ちる感触を感じ取ったマルコは目を細めた。
鷹の目が彼女に心を許したように、彼女もまた鷹の目に心を許した間柄だったのだろう。二人がどういう関係なのかはわからないが、そこに太い絆があったことは確かだ。

「ヤヒロ、泣くなよい」
「ッ、……泣いてねェ」
「強情な女かよい」

マルコがくつくつと軽く笑うとムッとしたヤヒロは腕で涙を拭うと反論した。

「青い不死鳥が本当にいるんだって思って……感動してんだ!」
「!」

想定外の科白にマルコは心が”また”揺れた。そして、黒地の衣服の背中に描かれた赤い龍と青い不死鳥の姿が脳裏に浮かんだ。どういう意図でその衣服を身に纏っているのかわからないが、不思議と嫌な気は全くしなかった。寧ろ誇らしく思えて、気持ちが高揚したのを感じた。

「ヤヒロ」
「……何だよ」
「鷹の目に託された以上おれはお前の面倒を見るつもりでいるよい」
「え?」
「直ぐに信用しろとは言わねェ。不安もあるだろうが、おれはお前を信用する」
「な、何で……?」

鷹の目に託されたというのは口実に過ぎない。本当のところはヤヒロに対する興味が芽生えたという個人的な理由だ。そして、聞きたくなった。ヤヒロにとって青い不死鳥ってェのは何だ?――と。
マルコの問いにヤヒロは目をパチクリすると微笑を零した。

「守護だ」
「守護?」
「赤い龍は攻撃的精神力を、青い不死鳥は守りの加護を、二つを持ち合わせた夜叉鬼神が私だ」
「夜叉…鬼神……?」
「見ただろ? 赤い龍と青い不死鳥の間に金糸で書かれた文字を」
「あァ、あれは文字か」
「そう。私の生まれ故郷の文字で『夜叉鬼神』って書いてんだ。夜叉のような鬼の神。鬼子母神からヒントにしたって聞いたなァ」
「鬼子母神?」
「確か子供を守る母神様だって聞いたな。夜叉神の娘だとか何とか……。うん、まァ、よくわかんねェけど、そんなとこ」
「ハッハッハッ! よくも知らねェでその文字を背負ってるってのかよい!」
「わ、笑うな!」
「クク、面白ェ女だな」
「ぐぬっ!?」

マルコにまで言われた!!――と、顔を顰めたヤヒロは、マルコが見えていないことを良いことにべーっと舌を出した。しかし、急に軌道が下降へと変わったことでヤヒロは慌ててマルコの首元に腕を回して捕まった。

「何も見えてねェと思って悪態吐いただろい」
「エスパー!?」
「エスパーってなァ何だ?」
「超能力者ってェ意味ィィああァッ! 胃が浮く!!」
「直に終わる」
「あわ!?」

白ひげの船に近付くと同時にヤヒロを背中から胸元へ移るようにマルコは身体を翻した。そして、先にふわっと欄干に着地すると同時に人へと変わったマルコは落下するヤヒロを受け止めた。
背中と膝裏に腕を通した俗に言うお姫様抱っこという体勢に思わず赤面したヤヒロは、「着いたよい」と告げるマルコの腕からゆっくりと下ろされるとヘナヘナと甲板に両膝を突いて四つん這いに伏した。
内心ドキドキして酷く顔が熱い。マルコに顔を向けることができないまま気持ちが落ち着くまで待つ。
その一方で、ヤヒロの背中をじっと見つめるマルコは目を細めた。

『青い不死鳥は守りの加護を――』

そう言われちまったら守らなきゃいけなくなるじゃねェかよいと胸の内で零した。

『安心しろヤヒロ。この男は不義はせん。』

鷹の目の言葉が脳裏に浮かんだ。最早ヤヒロに警戒心や敵意を向けることができなくなっているマルコは、鷹の目の思惑通りかと溜息を吐いた。

「オヤジに会わせてやるよい。この船に乗りたいなら自分でオヤジに頼まねェとな」
「あ、あァ、そうだった。…って、どう頼めば良いんだ?」
「それぐらいは自分で考えろよい」
「わ、わかった」

眉間に皺を寄せたマルコはヤヒロに顔を近付けて睨みながら言った。凄まれたヤヒロは苦笑を浮かべるしかなかった。

「ったく、それとなく助け船は出してやる」
「へ?」
「鷹の目が推したって言えばオヤジは興味を持つだろうよい」
「わ、わかった。何か悪いな、ごめん。ありがとうマルコ」

後頭部をポリポリと掻きながらヤヒロは申し訳無さそうな笑みを浮かべた。
片眉を上げたマルコは、笑えばそれなりに……と邪な思考がふと過って咳払いした。

「ついて来い」

白ひげのいる船長室へと案内するべくマルコはヤヒロを連れて船内に入った。途中、すれ違う船員がヤヒロを見て驚いた表情を浮かべてはコソコソと話をする者が殆どだった。
特異な視線を感じながらヤヒロが思い出すのは、元の世界でも同じような目を向けてコソコソと話をする一般人の姿だ。それが船員と重なって見えたヤヒロは思わず笑みを零した。

「気にするどころか余裕そうだな」
「ん?」
「あいつらの視線は、嫌じゃなかったかい?」
「慣れてるから大丈夫だ」
「……慣れてる…か……」

鷹の目は海賊向きだと言っていたが、何とも不思議な奴だとマルコは思った。
あの孤高の大剣豪である鷹の目が何故ヤヒロを送り届けるような真似をしたのか。何故ヤヒロをあれほど推したのか、ヤヒロに向けたあの笑みの意味は何か――。
その辺りにいる女とは違うと言っていたが、鷹の目の行動や言動、表情だけで十分にそうだと言える。

船長室の前に辿り着いて後ろを振り返ったマルコは、#目を見開き口をあんぐりと開けたまま扉を見つめて固まるヤヒロに思わず肩を揺らして笑った。

「ハハッ……お前、何てェ顔してんだい」
「いや、あまりに大きいから」
「なら、オヤジを見たらもっと驚くよい」
「でかいって話は聞いてる」
「まァ、でかいのは間違いじゃねェが……、もう少し言い様があるだろい……」
「あ、失礼だよな? 悪い」
「……」

アハハと笑うヤヒロに溜息を吐いたマルコは、船長室の扉をノックした。

「オヤジ、マルコだよい」
「あァ、入れ」
「ヤヒロ、オヤジに簡単に説明するからちょっとここで待ってろい」
「わかった」

マルコの言葉に従いヤヒロは扉前に立って待った。
少しすると、

「お、見ない顔だな。……誰だ?」
「む?」

声を掛けられて視線を向けたヤヒロは思わずギョッとした。
いつの時代だと思わんばかりのリーゼントヘアスタイルに、左の蟀谷付近から目元にかけて傷があって、黄色いスカーフを巻いたコック風の服を纏った男。

だ、誰だっけ?
こんな奴いたっけ?

思い出そうとして眉間に皺を寄せながら「うーん」と唸って記憶を辿る――が、全く思い出せない。

くそ、白ひげ海賊団のメンツなんて覚えてねェよとヤヒロは胸の内で悪態を吐いた。
基本、エースとオヤジしか記憶に鮮明に残っていない。後はマルコやビスタぐらいが何とか記憶に残っているぐらいで、その他のメンツはほぼ皆無と言える。

「ヤヒロ、マジマヤヒロって名だ。これから白ひげっ、えっと、白ひげさんと会って船に乗せてもらえるように頼むんだ」
「んー? 女の身でこんな大海原を一人で来たってェの?」
「あァ、それは――」

説明しようと口を開いた時、船長室の扉がガチャッと開けられる音に反応したヤヒロは言葉を切って振り向いた。扉から顔を出したマルコが目を丸くした。

「サッチ、何してんだ?」
「あれ? お前ェ不審な船があるって偵察に行ったんじゃなかったっけ?」
「あァ、それはもうとっくに済んだ。ヤヒロ、オヤジが会うってよい」
「あ、うん」
「え、何? ひょっとしてその船に乗ってたのってヤヒロちゃんってこと?」
「ヤヒロちゃっ……お、おう、一応そうなるな。マルコに連れて来てもらったんだ」

いきなり『ちゃん付け』って……と、ヤヒロは軽く動揺してポリポリと頬を掻いた。
そんな風に呼ばれたことが無いから何だかむず痒い。

サッチという名の男に軽く頭を下げたヤヒロは、マルコと共に船長室へと入った。すると、彼も一緒になって付いて来た。

モブキャラじゃないのか!?
サッチという名の男を一般船員だと思っていたヤヒロは、さも当り前のようにマルコの隣に立ち並ぶ姿に唖然とした。
困惑気味のヤヒロの心情を察知したのかはわからないが、片眉を上げたマルコは言った。

「こいつはサッチ。白ひげ海賊団4番隊の隊長だ」
「宜しくなヤヒロちゃん!」
「お、あ、はい、宜しくデス」

4番隊の隊長……くっ、わからん! 思い出せねェ!!と、少々パニック気味な思考を振り切って、ヤヒロは引き攣った笑みを浮かべて握手を交わした。

「グララララッ! 成程なァ、面白ェ服を着てやがる」
「あ、そうだった」

背後から低く大きな声を聞いたヤヒロは、思い出したかのように振り返った。

「でかっ!?」

でかいのレベルが遥かに超えてんじゃねェか!!と、
目の前に座る男のあまりにも大きな身体に思わず驚きの声を上げた。その反応を白ひげはさも楽しげに目を細めてグラグラと笑った。
その一方、ヤヒロの背中を見たサッチがまた目を見開いて驚いていた。

「(おいマルコ! 何だよありゃあ!?)」
「(鷹の目の預かりもんだよい)」
「(はっ!? た、鷹の目!?)」

自分の背後でサッチが驚き固まっていることなど露知らずにヤヒロは船長室の中心へと歩を進めた。

部屋の中には白ひげ以外に二人の男がいた。ヤヒロが目を向けると二人もまたヤヒロを見つめていて視線がぶつかる

あ、ビスタだ。と、ヤヒロはシルクハットを被る男が誰であるのは直ぐにわかった。もう一人は和服姿で見たことがある気はするが名前は思い出せない。

ビスタはニィッと笑みを浮かべ、和服姿の男は煙管を銜えながら軽く会釈をした。それに釣られるようにヤヒロも慌てて軽く頭を下げた。そして、再び白ひげへと向き直して背筋を伸ばした。

とりあえず、交渉だ。

うまくいきますように……と、ヤヒロはミホークの言葉を信じて白ひげの前に堂々と立つ。ヤヒロの目を見た白ひげは、片眉を上げると笑みを消して見据えるのだった。

不死鳥マルコ

〆栞
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