26


マリンフォードの処刑台にエースは繋がれた。傍にいるのは海軍の英雄ガープだ。

「エース、何故わしの言う通りに生きなんだ……」
「ッ……」

悔し涙を流すガープは「わしは…どうすりゃあいいんじゃ…!」と零した。

「ガープ、今更余計な気を起こすなよ?」

海軍元帥であるセンゴクが厳しい目を向ける一方、ガープから視線を外したエースは目を伏せた。その時、ふと頭の中で声が響いた。

『また、みんなで笑おうな。エース』

自分を生かす為にインペルダウンにまで来てくれたヤヒロの声。そして、その言葉。
あの時は何でここに!?と驚きはしたが、同時に嬉しい気持ちが込み上げて胸が熱くなった。
深く息を吐いたエースは僅かに口角を上げると徐に口を開いた。

「ジジイ」
「……何じゃエース」
「おれは海賊になって良かったと思ってる」
「な、何じゃと!? このようなことになってお前はまだ――!!」

笑みを浮かべるエースに思わず言葉を飲み込んだガープは目を丸くした。
これから処刑される身だというに、何故そのように笑っていられる?
まだ諦めていない。
そんな目をしているとガープは思った。
その時だ。
恐らく現れるであろう白ひげ海賊団に備えて軍艦を配置していた中、目前の湾内に異変が起き始めた。ボコボコと音を立て始める様に気付いたセンゴクが目を見張る。

「ま、まさか……!」

センゴクの悪い予感は的中した。海中を潜り抜けて処刑台の目前に姿を現したのは、コーティングされた白ひげ海賊団のモビー・ディック号を含めた三隻の船。
驚愕して顔を歪めたセンゴクは、海兵達に臨戦態勢を取るように指示した。
モビー・ディック号には白ひげを筆頭に十五人の隊長達が立ち並ぶその様は圧巻だ。世界最強とも称される白ひげ海賊団はやはり格が違う、と海兵達は武器を構えながらゴクリと固唾を飲んだ。圧倒的なオーラに気圧されて萎縮している。

「グララララ、何十年ぶりだセンゴク。おれの愛する息子は無事なんだろうな?」
「くっ……、白ひげ……」
「グララララッ!」
「こうも接近されるとはっ!」

目前に現れた白ひげ海賊団を率いる白ひげの姿に、エースの胸の内にヤヒロの言葉が現実味を帯びて大きな波紋を広げる。

『命尽きるまでは必死に生きろ』
『最後まで諦めんなよエース』

皆の声が、音無くとも、そう聞こえた。

「グララララッ! ちょっと待ってなエース」
「! くっ……オヤジィィィッ!!」

白ひげの声に気持ちが破裂してエースは堪らずに声を上げた。ニヤリと笑みを浮かべた白ひげは、愛刀の薙刀を地に刺すと両腕を交差して身を屈めた。そして、力を込めて交差した両腕を左右に広げた。拳の先からミシミシという音と共に空間に亀裂が入る。

愈々運命の時――
頂上戦争の幕開けだ。

一方その頃――
思ったよりも早くインペルダウンを脱出したヤヒロ達は、一路マリンフォードを目指して船を走らせていた。
途中イワンコフがルフィと話をしている折にルフィの父親とエースの父親についての話題が上がる。ルフィが暴露すると船に乗っていた者達全員が驚きの声を上げて一瞬だが船が軽く飛んだ。

「あ、これ、秘密だった」

ニシシッと笑うルフィを尻目にイワンコフは開いた口が塞がらない。いや、イワンコフだけでは無く、囚人達もバギーやMr.3も驚いて口が開きっ放しだった。
そんな中、船の先頭に立っていたヤヒロは一人別世界にいる。

んー……、もう始まってんじゃねェか?
スピードは……、これ以上は出ないよなァ。こればっかりは風任せな所があるし……。
あ”ァ”〜〜! エンジンが欲しい!
フォアのエンジンでも取り付けて走らせてやりてェ!

無茶なことを考えつつ少しでも船の速度よ上がってくれとヤヒロは切に願っていた。





エースを前にした白ひげ海賊団に妙な違和感を感じたセンゴクは息を飲んだ。

やけに異様な雰囲気だ。
これは一体、何だ?

白ひげ海賊団の士気が非常に高いのはわかるが、その高さが異常に思えた。
用意周到と言うのか、何もかも事前にわかっていたかのような、そんな雰囲気さえも感じられる。

「この海じゃ、誰もが知ってるはずだ。おれ達の仲間に手を出せば一体どうなるかってェことぐらいなァ」
「おめェを傷付けた奴は誰一人生かしちゃおかねェぞエース!」
「待ってろぉ! 今助けるぞ!!」
「覚悟しろ! 海軍本部!!」

白ひげ海賊団から上がる声にエースは眉間に皺を寄せながら唇を噛み締めて目を瞑った。

「エース!!」
「ッ、マルコ……」
「湿気た面してんじゃねェ!!」
「!」
「オヤジを! おれ達を! ヤヒロを信じろ!」

エースに向けて声を上げたマルコによって白ひげ海賊団は立て続けに「うおおおっ!」と鬨の声を上げ、白ひげは笑みを浮かべる。
エースは眉尻を下げてグッと堪える表情を浮かべたが、僅かに口角を上げて微笑を浮かべた。その様子にガープは僅かに目を見張った。

また笑いおった。何がお前に笑みを持たせる? 死を前にして何がお前を……、お前の心の中に誰がいるんじゃエース!

「あらら、とんでもねェもんを呼び寄せたなァ」
「何を今更言うちょるんじゃ」
「気味が悪いねェ〜」

青雉、赤犬、黄猿の三大将は表情を変えることなく白ひげ海賊団を見つめていた。また、王下七武海もその様子を黙って見つめていたが、モリアは新たな精鋭が手に入ると意気揚々と喜びの声を上げる。ドフラミンゴも笑みを浮かべて「フッフッフッ!」と声を漏らして笑ったが、隣に黙って立っている鷹の目のミホークに視線を移した。

「鷹の目、お前はまた傍観者希望か? どうせ暇潰しに来たんだろう? 好きにしな、フッフッフッ!」

ドフラミンゴはミホークにそう言うと視線を白ひげ海賊団へと戻した。視界に白ひげ海賊団1番隊隊長の姿を捉えると、ふとある人物を思い出した。

そういやァあの女……、ヤヒロと言ったか。あいつも確か白ひげ海賊団だと言っていやがったが……。

『また会ったらそん時は宜しくな』

まさかこの戦いを想定した上で、おれに『味方に付け』と言ったんじゃあねェだろうなァ?

白ひげ海賊団の中にヤヒロの姿を探したがどこにも見当たらない。ドフラミンゴは少しだけ安堵するような溜息を吐いた。しかし、何故そういう心持ちになったのか、自分でもわからなくて内心で舌打ちをした。

そんなドフラミンゴの隣でミホークは表情一つ変えずに白ひげ海賊団を見つめていたが、ふとマルコと視線が合うと僅かに口元を弧に描く。
マルコもまた王下七武海が佇む中にいるミホークへと真っ直ぐ目を向けて、ミホークと睨み合う形となった。

ヤヒロの姿は無い……か。ならば、少し遅れて麦わらの小僧と共に来るのだろう。としたミホークに対して、鷹の目……、お前はどっちに付く気だよい。とマルコは胸の内で言葉を発する。
そして、二人の思惑が一致する。

全てはヤヒロがここに来るまで。
全てはそこからだ。





海の水位が下がり始めた。
それはヤヒロ達が乗る船にも大きく影響を与え、船は風と波によって逆走し始める。

「どうなってんだよ、畜生! おれは少しでも早く進みたいのに!」

麦わら帽子を押さえながらルフィは唸るように声を上げた。だが、これにはどうすることもできずに止まるまで我慢するしか無い。
囚人達が風に飛ばされて壁に激突したりと散々な中で、特攻服を激しくはためかせながら船の先頭に佇むヤヒロは微動だにしない。
その様子を見つめるジンベエは、風を真面に受けとるはずなのに、あの華奢な身体が吹き飛ばされもせんとは。と感嘆した。

何を考え、何を想い、何を見据えてその場に佇んでいるのか。

ヤヒロの背にある赤い龍と青い不死鳥よりも金糸で描かれた『夜叉鬼神』の文字が異様に浮かんで見えたジンベエは、ヤヒロから底知れぬ威圧を感じ取って思わずゴクリと固唾を飲んだ。
子供のように笑い、気さくに話しをしていたヤヒロは疾うに消えている。冷酷で無慈悲な笑みを浮かべる夜叉鬼神がむくりと顔を出し、来たるその時に向けて好戦的な目を宿したヤヒロがそこにいた。――が、それはジンベエが僅かな変化を感じ取っただけで、まだ誰も気付いていない。

この波風は白ひげの能力によるものだろう。
圧倒的な力を感じたヤヒロはゾクリと身体を震わせ、これから始まる大きな戦いに向けて気合を入れた。

いつぶりだろう、こんな気持ちは。族の連合同士の潰し合いのあった時以来かな。率先して参加したらあっという間に決着がついたんだよな。結局は全ての族が『夜叉鬼神』の傘下に収まって一気に巨大な族集団になって……それで警察に目を付けられたんだよなァ。と、懐かしい記憶が蘇る。

これからの戦いはそんな暴走族同士の小競り合いのような生温いものではない。この世界における最高峰の強さを誇る者達が集って争う頂上戦争だ。
特別な力を持っているわけではないのに暢気なもんだとヤヒロは自嘲した。そして、夜叉鬼神の頂点に立っていた時代に課した鉄則を胸に己を奮い立たせる。

全て仲間の為に戦うこと。自分がどれだけ馬鹿にされようと無闇矢鱈と自ら喧嘩を売るな。だが、もし自分の仲間を馬鹿にされたり傷付けられたのなら喧嘩上等。恐れるな。とことん向かって行け。

他者の為に戦うから怖くないのか、それはわからなかったが、この世界に落ちて彼らと会ったからには、強い決意と覚悟を持って挑むと決めた。その時から『怖さ』だとか『畏怖の概念』等は持ち合わせていない。

それでも――、
助けたい、守りたい、そう思える親しい者の死は、怖い。
だから――、
誰も死なせねェ、絶対に。

徐に右拳を左の手の平にパンッと叩きつけて深呼吸を数度繰り返してヤヒロは目を瞑った。
風が止んだ。

「なァ! ジンベエ! 何とか急いでくれ! 頼む! エースの処刑の時間までに着かねェと!」

風によって逆走してしまい目的地であるマリンフォードから遠ざかったことでルフィは焦りの色を隠せないでいる。ジンベエの衣服を引っ張って訴えるルフィに、ジンベエはゆっくりと振り返った。

「心配するなルフィ君、必ず間に合う」
「……」

真っ直ぐ向けられる目と確かな言葉。ジンベエを信用したルフィは納得したように笑みを浮かべて頷いた。しかし、バギーがMr.3と縺れ合うようにして欄干を越えてルフィ達がいる甲板へとドサリと落ちると文句を言った。

「おうおう、やけに自信満々じゃねェか! 魚人空手でも役に立つってのか?」

嫌味ったらしく放たれた言葉にルフィは少しだけムッとしたが、ジンベエは見向きもせずに口を開く。

「わしの力など知れたもの」
「へェ、じゃあ誰の力で進むんだ?」

嫌味を含んだ物言いをするバギーに「間に合うと言ったんだ! 必ず間に合う!!」と、ジンベエに代わってルフィが返した。

「『間に合うと言ったんだ! 必ず間に合う!!』って、勝手にやってろ! ワケわかんねェ」

ふんっと鼻を鳴らしてバギーは寝転がった。

「ヤヒロ殿、お主はどう見る?」

ジンベエが徐にヤヒロに声を掛けると、バギーは慌てて起き上がってヤヒロに視線を向けた。ルフィも先頭に佇むヤヒロに顔を向けて背中を見つめた。

「大丈夫。間に合うよ」

ゆっくりと振り返ったヤヒロは微笑を浮かべてコクリと頷くと再び前方へと向き直した。
ただ、その時のヤヒロの表情を見た彼らは思わず息を飲んだ。
微笑を浮かべて言い放たれた言葉、いや、その声音は妙な安心感を齎すと同時に、何とも言えない圧倒的な威圧感に心臓をギュッと握られたような気がしたからだ。

「……ヤヒロ……?」

ヤヒロの雰囲気が変わったことに漸く気付いたルフィは、ヤヒロの元へ歩み寄ろうとした。

「待てルフィ君」

ジンベエがルフィの肩を掴んで制止した。振り向くルフィにジンベエは首を振る。ルフィはジンベエの真剣な表情を見て大人しく従うことにした。

覇王色の覇気とは違う圧倒的な威圧感から言い知れぬ力を秘めていることがわかる。
本当はヤヒロが何者であるのかを知るべきだろうとは思う。だが、その為には余程慎重に扱うべきであり、そして時間を有する必要がある、とジンベエは考える。
しかし、今はその時では無い。
先程と打って変わって風が逆に吹き始めた。それと同時に潮の流れも変わって船の速度がぐんぐんと上がって行く。一体何が起きているのか誰もわからなかった。
だが――

「すげェ! ヤヒロの言葉通りだぜ!」

囚人達はヤヒロに心酔して声を上げた。

「キャプテン・バギー!! あんたの女って凄ェぜ!!」
「ふぇ!?」

目を倍に開いて驚くバギーに囚人達は声高らかに言った。時代はあんたを必要としてんだ!おれ達は一生ついて行きますぜ!と。
最終的に、どこか何かがズレた発言を口々に言い放つ彼らにバギーは苛立ちやら恥ずかしさやら何やらと、よくわからない心境に追い込まれた挙句、もうやけっぱちに開き直って「ふ、ふはははは!」と声を上げて笑い出した。

「そうだ! 時代がこのおれを呼んでやがるんだ! さっさと天下を取りに行くぜ!!」

囚人達の色々と間違った思い込み発言に調子に乗らざるを得なかったバギーは、威風堂々とそう宣った。宣ってしまった。やった感満載だ。
そんなバギーの声など一切聞いてもいないのだろうヤヒロは、表情を一切変えずに舵を握るジンベエとその横に立つルフィの元へと歩んだ。

「どうしたヤヒロ?」

ルフィは声を掛けたがヤヒロの視線は遥か後方を見つめている。ルフィが眉を顰めて首を傾げるとヤヒロは「津波だ」と一言だけ言い放った。

「え?」
「な、何じゃと?」

ルフィとジンベエが後方に視線を向けた。他の者達もそれに気付いて後方へと視線を向けた。

―― !? ――

巨大な津波が押し寄せてくる姿に誰もが目を見張る。ただこの津波は頂上戦争が始まった合図でもあることをヤヒロは察した。





大きな津波がマリンフォードに到達して海軍本部へと襲い掛かった。しかし、三大将の内の一人である青雉のクザンによって津波は氷と化して被害を抑えた。更に辺り一面を氷で覆い尽くして船の動きさえも止めた。
これに海軍兵達は気圧されていた士気を取り戻して意気揚々と声を上げ始めた。

「おれ達には! 海軍本部最高戦力の大将がついてんだ!」
「そ、そうだ! 白ひげ海賊団! 恐るるに足らず!!」

海軍からモビー・ディック号へと砲撃が開始されると同時に、白ひげ海賊団もまた良い足場ができたと声を上げて「おれ達の力を見せてやれ!!」と船から降り立った隊員達と海兵達が激突した。

開戦した広場の様子を見つめているミホークは、少しだけ溜息を吐いた。
果たしてその士気が最後まで持つかどうか見物だな――と。

白ひげや赤髪をも恐らく超えるかもしれない力を持った圧倒的な威圧を放つ鬼神がこの場に降り立った時、海軍の士気は恐らく極端に下がるだろう。そして、この戦いが終わった後、海軍は鬼神を四皇以上の危険人物と見做すことだろう。

戦いは始まったぞ。早くここに姿を現せ、ヤヒロ。
お前がどう世界を変えるか、お前の生き様を見せてもらおう。

遙か遠くの海へと視線を移したミホークが動いた。
気紛れの暇潰しに戦う気になったのかと、まるで珍しいものを見るかのように海軍大将や七武海達が視線を送る。
背負っていた愛刀を手にしたミホークが白ひげへと目を向けると白ひげは、鷹の目、お前ェはどう動く気だ?とでも言うように僅かに口角を上げた。
それを一瞥してミホークは湾内に下り立つと、他の者には目もくれずに一人の男に向かって剣を振り翳した。

「不死鳥マルコ。相手にとって不足は無いな」
「チッ! 鷹の目、てめェ……!」
「何、ほんの暇潰しだ。ヤヒロが来るまでのな」
「!」

ミホークが口角を上げて少しばかりの笑みを浮かべるとマルコは何となく察した。
この男は王下七武海で立場もあるのだ。率先して白ひげ海賊団の味方をするわけにもいかないのだろう。何よりこの男はヤヒロの為だけに動く――と。

「面白ェ……。ヤヒロが来るまでおれはお前の相手をしてやるよい」
「せいぜい倒されんように気を張ることだな」
「はっ! 白ひげ1番隊隊長を甘く見るな!」

雑兵達の中でマルコとミホークが戦い始めた。それを白ひげの後方で守りを固めていたサッチが目を丸くした。

「サッチ、これは想定外。そうだな?」
「あァ、イレギュラーだオヤジ。マルコと鷹の目が戦うなんざ聞いてねェよ」
「あいつも立場があるからなァ。ヤヒロが来るまでの時間稼ぎのようなもんだろう」
「オヤジ、気付いてる? エースの奴」
「あァ、エースの眼光も死んじゃいねェ。それもこれもヤヒロのおかげだ。グララララッ!」

白ひげは実に楽し気に笑った。それをセンゴクは不穏に感じて眉間に皺を寄せた。

「ガープ……、どう思う?」
「……何がじゃ?」
「わからんか? 何か、何かがおかしい。そう感じないか?」

センゴクとガープの会話を耳にしていたエースは、顔を俯かせたままクツリと小さく笑みを浮かべた。

これは全てヤヒロのせいだ。なァ、そうだろオヤジ?

湾内では戦争が徐々に激化し始め、海軍中将も大勢参加し始めたというのに、白ひげ海賊団の士気は依然高いままで、海軍が少しずつ押され始めているのだ。そして、戦いの中で白ひげ海賊団が口々に叫ぶのだ。

「「「姐さんに比べりゃ怖くねェェェェ!!」」」

ヤヒロの訓練を受けて地獄を見た白ひげ海賊団の隊員達は、隊長格の者達に負けず劣らず異常に強かった。戦う際の顔の表情がやけにキラキラしているのは、恐らくはヤヒロに比べて海軍の可愛いこと可愛いこと。

「戦いってこんなに気楽にできるもんなんすね!!」

と、誰かが言うと隊員達は次々と涙して喜々とした。

「…………何があった不死鳥?」
「そ、それは……、」
「……」
「察してくれたのはわかる。ただ、そんな哀れな目で見るんじゃねェ。剣で攻撃されるよりッ……、精神的なダメージが辛ェよい」

鍵爪で剣を弾いたマルコは額に手を当てて大きな溜息を吐いた。

「……」

ヤヒロ、助ける者達を追い込んでどうする?
ミホークは少し同情して呆れにも似た目で戦況を見つめるのだった。

頂上戦争 @

〆栞
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