青空を割るように鳴り響いたホイッスルは、試合終了を告げる合図。
フィールドに仰向けに倒れ込んだドモンや、肩を上下させて息を切らすディランを見て、あぁ、終わってしまったのかと、何故かほろ苦い笑みがこぼれた。
最後に交わしたテレスとの握手はやっぱり力強くて、今も昔も変わらないと思った。




「見事な試合だったよ、マーク」

いつからいたのか、控え室の入り口に立っていたのはこれまた馴染みの顔。

「フィディオ、見に来てたのか」
「あぁ」

遠慮する様子も無く控え室に入ってきて俺の隣に腰を下ろした。

真っ直ぐな姿勢と瞳。
端から見れば今の俺とは真逆なんだろうな。背中は情けないくらい曲がってるし、体中汗と泥でボロボロだし。
でも今この部屋には、俺とフィディオしかいない。他のメンバーを先に帰しておいて良かったと思った。

「いい試合だったよ、本当に」

俺の頭をタオルで拭きながらフィディオが言った。
小さい頃、お風呂から上がった時によく、こうやってフィディオに髪を乾かしてもらってたことを思い出した。「犬みたいで可愛い」と、俺を見て幼い頃のフィディオはいつも笑っていた。

「負けたよ…アルゼンチンの壁は越えられなかった」
「うん」
「カズヤと約束したのにな、必ず決勝トーナメントに進むって」
「うん」
「フィディオ、俺は…俺はお前と…っ」

限界だった。
気がついた時にはフィディオの胸に顔を埋めて、子どもみたいにわんわん声を上げて泣いていた。
フィディオの腕が、俺の背中に回る。フィディオの手が、俺の頭を優しく撫でる。
それだけで胸がすごく締め付けられて、目からはダムが決壊したみたいに涙がどんどん溢れてくる。

「マーク、マークは強くなったね。本当に強くなった」

違う。強くなんてない。俺はあの頃と何一つ変わってないんだよ。
こうやって直ぐお前に縋って、甘えて、困らせて。

「今は泣いて…思いきり泣けばいい」

俺が全部受け止めるから

あぁ…その言葉に、フィディオの言葉に、何度助けられただろう。
それは麻薬みたいに脳を痺れさせ、身体中を浸透させていく。
俺はそのまま、生まれたての赤ん坊みたいにフィディオにしがみついて泣き続けた。声が枯れようが、目が赤くなろうが構わなかった。
今はただ、フィディオのくれる優しさが温かくて、気持ちよかった。














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