※大学生パロ
その日はマークからの電話で目が覚めた。
どちらかというと朝に強くない俺は、さほど言葉も理解しないまま「あー」や「うん」の曖昧な返事でマークとの会話を終わらせた。
携帯をベッドの脇に放り投げてシーツを手繰り寄せる。
このまま二度寝してしまおうかと考えたが、サボテンの水やりがまだだったと思い直して、しぶしぶシーツを手放した。
(あ、今日は燃えないゴミの日だったか)
歯を磨きながらカレンダーに目をやると、そこにはきっちり青のマーカーで丸がつけられていた(ちなみに燃えるゴミの日は赤)。出し忘れないようにと、この前マークが家に泊まりに来たときに色分けまでして、つけてくれたものだった。
その青で囲まれた数字をぼんやり眺めていた時だった。
(14…14日…)
しまった、と思ったのと同時に家のインターホンが鳴り響く。
慌てて玄関まで行って勢いよくドアを開けると、そこにはやっぱりマークの姿が。その端整な顔立ちを見た瞬間、罪悪感が最高潮まで達する。
「ハッピーバレンタイン、フィディオ」
「…すっかり忘れてたよ」
マークはくすくすと笑いながら、そんなことだろうと思ったと言って、ピンク色の紙袋を差し出してきた。
「ティラミス、甘さは控えめにしておいた。けっこう自信作なんだ」
「ありがとうマーク。…ごめん」
「大通りのケーキ屋のホールケーキ一つ」
それで許してやるよって、マークはまた悪戯っぽく笑った。
バレンタインデー記念。