※大学生パロ



「旅行がしたい」とフィディオが言った。何気なくポツリと。
俺は淹れたてのコーヒーを啜りながらフィディオの方を見た。ソファーに寝そべったままの状態で雑誌をパラパラとめくり、両足を一定のリズムで交互に上げ下げしている。

「そんな暇も金もないだろ」
「そうかな。今はゼミとかバイトで忙しいけどさぁ」

ギシッとソファーの安っぽい音を立ててフィディオが起き上がる。さっきまで読んでいた雑誌のあるページを俺の前に差し出してきて

「行くならここがいい」

視界に飛び込んできたのは、美しく雄大な自然。どこまでも続く森林と湖は、言葉では表現できないほどの、澄みきった深い色だった。

「北欧……」

一瞬にして俺の目を奪ったその風景は、とても写真越しとは思えないほどの感動を伝えてくれた。これが実際に目の前にあったら、どれほどのものだろうか。

「綺麗だな…すごく」
「うん。実際にこの目で見てみたいんだ」

フィディオの手が俺の左手に重なる。そのままぎゅっと握られて、さっき見た、北欧の真っ青な空みたいな色の瞳に捉えられた。

「行こうよ。春休みにでも」
「あぁ…」

俺も見てみたいんだ。その瞳と同じような空を。

あっという間に、春が待ち遠しくて仕方なくなってしまった。

















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