隣に在るはずの温もりを求めて手を伸ばしたのに、掴んだのは何故か、少し冷たくなった水色のシーツだった。
(風介…?)
時計に目をやると6時30分。
ベッドから抜け出して、まだ暖房の入っていない寒い部屋を出る。
リビングから何か物音がしたような気がして中を覗くと、先ほどまで隣で寝ていた風介が、起きたままの姿で椅子に腰掛けていた。
「ここに居たのか」
「やぁ、おはよう」
手に持っていた飲みかけのコーヒーを奪って口をつける。それは思った以上に甘くて、ミルクの濃い味がした。
「お前、今日が何曜日か知ってるか?」
「日曜日」
俺たちは日曜の朝といえば大抵、昼頃まで寝て、起きたら朝食を兼ねての昼食をとる、なんて休日らしい休日を過ごしていたはずだ。
なのに今日に限って…冬の寒さを身に染みるようなこんな寒い日に限って何で早起きなのか。
そもそもあの低血圧の風介が、一人でこんなに早い時間に起きれるなんて奇跡に近い。
「別に理由なんて無いよ。ただなんとなく、目が覚めちゃっただけで」
そう言うと風介はまた、あのミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒーに口をつける。
昨日ちゃんと乾かさないで寝たせいか、もともと癖のある風介の髪が落ち着きなくゆらゆらと揺れた。
「…早起きしたついでに遠出するか」
「遠出?」
「郊外に新しくショッピングモールができたらしいから行ってみようぜ」
「いいね。ちょうど新しいマグカップが欲しいと思っていたんだ」
そうと決まったら朝食の準備だね、と風介はコーヒーを飲み干した。
まぁ、どうせ作るのは俺なんだけど。
たまには早起きも悪くない。そう思った。