「あ、柿だ」

学校の帰り道。
急に立ち止まった風介の視線の先を見てみると、きれいなオレンジに色づいた大きな柿が実っていた。しかもそれは一つだけじゃなくて、その木全体をオレンジ一色で覆い尽くすには十分なほどの数だった。

「あ―、美味そうだな」
「…一つくらい取ってもバレないかな?」
「いやいや、さすがにそれはマズいだろ」

今にも他人の家に不法侵入しかねない風介を制止すると、「こんなにたくさんあるのに」と頬を膨らませてその場にしゃがみこんだ。

「そういえばお前、ガキの頃も人んちの柿取ろうとしたよな」
「あれはお前と茂人が無理やり登らせたんだろうが」
「そうだっけ?しかも登ったはいいけど、降りれなくてずっと木の上で泣いてたよな」
「…お前たちはずっと笑ってばかりで助けてくれなかったし、家の人には見つかって怒られるし、散々だったよ」

そう言うと風介は立ち上がって、またゆっくりと歩き出した。

「柿…買って帰るか」
「うん…あ、でもやっぱりみかんの方がいい」
「はいはい」













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テーマ「人外ファンタジー」
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