※大学生パロ



今日は散々な1日だった。
まず朝の話。寝る時にアラームを設定し忘れたせいで寝坊して朝食を食べ損ねた。更に急いで家を出たせいで、バスの定期を忘れて学校まで自腹。
昼は昼でゼミの先生に捕まって、荷物運びを手伝わされて教室と図書館を5往復。やっと終わったと思ったら昼休み終了のチャイムが鳴ってけっきょく昼食はお預け。
放課後になってやっと帰れると思ったら、まさかの雨で足止めを喰らった。仕方がないから学校の売店で傘を買ったのに、外に出ようとした頃にはすっかり晴れていて、800円も出して買った傘は無意味に。
やっとの想いで帰りのバスに乗ったら、疲れていたせいか、本来降りるバス停を通り越して終点までぐっすり眠ってしまった。本当に最悪。

むなしさと切なさでいっぱいの気持ちのまま家までたどり着くと、一人暮らしの俺のアパートの部屋に明かりがついていた。
不思議に思って恐る恐る部屋のドアを開けると、中からは聞き慣れた声と、美味しそうなトマトソースの香りが俺を迎えてくれた。

「お帰り、フィディオ」
「……マーク?どうしたんだ一体」

そこにはエプロンを身に付けてぐつぐつとパスタを茹でるマークの姿が。
マークには合い鍵を持たせてるから部屋には自由に出入りできるんだけれど、突然の訪問は今日が初めてだった。

「いや、今日はたまたま早く帰れてさ、せっかくだからフィディオが帰ってくるまでに夕飯でも作ってようかと思ったんだ。前にフィディオ、トマトソースのパスタが食べたいって…」

きゅん、と胸が締め付けられる感覚に襲われて、愛おしさのあまり、俺はマークを力いっぱい抱きしめた。

「フィディオ…?」
「ありがとう。すごく…すごく嬉しいよ」

健気にここまで俺を気遣ってくれる目の前の恋人があまりにも可愛くて、我慢できずにマークの小さな唇に自分のそれを重ねる。
そっと離れるとマークは真っ赤になりながらも「フィディオが喜んでくれて…よかった」と、俺の大好きなとろけるような笑顔を見せてくれるものだから、今日1日の不運な出来事なんて一気にどこかへ吹っ飛んだ。

「さて、冷めないうちに食べよう…か!」
「なっ…!お、おい!フィディオ!降ろせ!!」
「部屋まで運んで差し上げますよ、お姫様?」
「だっ…、誰が姫だ!!」

早く降ろせ!っていうマークの怒声なんて聞こえない振り。

あぁ、マーク。
かなり自惚れかもしれないけど、俺は今、世界で一番幸せ者だよ、きっと。
















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