しまった、と思う頃にはもう遅かった。
汗のせいで体に張り付く衣服の気持ち悪さと微妙な喉の痛さに顔をしかめる。
テーブルの上の飲みかけのコーヒーに口をつけると、すっかり冷めていて不味くなっていた。
(もう2時かよ……)
あれほどヒロトにコタツで寝ると風邪ひくよ、って言われてたのに…
やっぱりコタツでテスト勉強はやるべきじゃないと思った。
考えてみれば、今までこの程良い暖かさの誘惑に勝ったことがない。
隣でいっしょに数学と格闘していた風介の目もきっちりと閉じられていて、規則正しい寝息を立てていた。
「おい風介、起きろ」
「………」
ぺちぺちと風介の頬を叩くも、起きる気配はない。「うーん…」と唸って体を丸める、まるで猫のような仕草。
(まったく…困った猫だ)
コタツから風介を引きずり出して、ヒョイと肩に担ぐ。驚くほど軽いその体は、コタツの熱のせいでほんのり温かかった。
(軽っ、コイツまた痩せたか…?)
もともと好き嫌いも多くて少食な風介は食べるものも限定されていて、自分から積極的に食事をとることはめったに無かった。
「明日はコイツの好きなもん、作ってやるか」
風介をベッドに寝かせて、癖のある髪をくしゃりと撫でた。
「おやすみ、風介」