「君のことが好きなんだ」
思わず手に持っていたジェラートを地面に落としそうになった。
俺の目の前にいるこのイタリア人は何の前置きもなく、まるで今日はいい天気だね、くらいの調子で言ってきたのだ。
「何の冗談を」そう言って返そうと思った。
だけどあの真っ直ぐな目に、あの大きなマリンブルーの瞳に射抜かれたら、「冗談」なんて言葉はライオコット島の空へと消えていった。
イタリアエリアまで遊びにおいでよ、と言われたのは3日前。フィディオとはゆっくり話もしたかったかし、何よりその日はお互い練習もオフということで、俺は二つ返事でフィディオの誘いに応じた。
サッカーのこと、お互いのチームのこと。
話したいことは山ほどあったんだ。なのに
「マークが好きだ」
突然の告白にヒュウッと息を飲む。
このイタリアの白い流星は、真剣な顔で何度も俺を好きだと言うのだ。
「何で……」
男だぞ、そう言いかけたのに声に出せなかったのは、やけに整ったフィディオの顔が目の前にあって、気づいた時には相手の唇が自分のそれに重なっていたからで。
チュッと可愛らしいリップ音の次に待っていたのは
「俺のものになってよ、マーク」
あぁ、そんなに綺麗に微笑まれたら
頷くしかないじゃないか