□□ヒート視点
さて、どうしようかと考える。
今何を言っても目の前の相手…ガゼル様は泣いてばかりで口を開かないし、俺がおそるおそるタオルを差し出すと勢いよく奪い取って、そのまま顔をうずめて動かなくなった。
「大丈夫ですか、ガゼル様?」
「…うっ…ひっぐ…」
こうなった理由はおおかた想像がつくけど、ガゼル様が落ち着いてきたのを確認して、念の為お尋ねした。
「…今回はどうされたのですか?」
「バーン、と…けんか、した…」
うん、やっぱりね。
ここまでは想定内。ガゼル様がこんなに顔を歪ませて泣きじゃくる時は決まってバーン様と揉めた時だ。
まったく…あんたらこれで何度目だよ。
「バーンに…」
「……」
「おまえなんか、きらいだ…って言った…ほんとは、すき…だいすき、なのに…っ」
やっと落ち着いてきたと思ったらまた肩を震わせて、タオルに顔をうずめながら泣き始めた。
俺ははぁ、とため息をついて小さい子どもに話しかけるように、うずくまったガゼル様に目線を合わせて話しかける。
「ガゼル様、バーン様に謝りに行きましょう」
「でも…」
「泣いてたって何も変わりませんよ?大丈夫です。ガゼル様が素直にごめんなさいすれば、バーン様も必ず許してくれますよ」
もはや何回目かも分からないお決まりの台詞を言うと、ガゼル様は真っ赤に腫らした目を此方に向けながらおずおずと頷いた。
「さぁ、バーン様の部屋に行きましょう」
「……うん」
もう喧嘩はほどほどにしてくださいね?
仲介役も、緩くないんです。