(ああ、どうしよう)
困惑していた。手、足、小日向さんの驚く顔を見て確信する。僕は小さくなった。それも、2センチや5センチ単位じゃない。小日向さんの両手に収まるサイズになってしまった。どうしてこんなことになってしまったのか、起きたらこの状態だ、理解できるはずがない。
「八木沢さん」
今朝一番に出会ったのが小日向さんでよかったのか判断に困ることだが、小日向さんは小さくなった僕の目線に合わせるようにそっとしゃがみこんだ。
「大丈夫なんですか?」
「体が小さくなった以外は正常だと思います」
多分、と付け加える。
「小日向さん、すみません。和菓子を一緒に作る約束をしていたのに」
「いいえ、大丈夫です!それより」
「この状況をなんとかしないといけませんね」
「はい。でも」
「でも?」
「八木沢さん、とっても可愛いです!」
ふわりと柔らかい笑みを浮かべ、僕の髪に触れた。間近でみる小日向さんの手は細く白く柔らかく、女性の手だった。
「うわ」
「あ、すみません!」
「いえっ」
頬が熱くなる。
「ほっぺた、さわってもいいですか?」
「いい、ですよ」
ありがとうございますと嬉しそうに笑ったあと、ふわんと優しく指がほっぺたにふれた。
「やわらかいですね」
「そうです、か」
女の子は小さいものが好きだと言うけれど、今の僕の姿を見て可愛いと笑っている。(ああそんなに幸せそうな顔をしないでください)このままでもいい、そんな錯覚に陥りそうで、けれど柔らかい小日向さんの手から逃れることも出来ず、赤くなるばかりの頬にふれ小さく息を吐いた。
その綺麗な手のひらは僕だけのもの
「ちいさくな〜る“とろけるさわやか風味”」
リサイクル箱の中には昨日、水嶋から貰った飲み物の空き缶が転がっていた。
end
20100406
提出「手乗りヒーローズ」さま