だってさ、君がそう言ったんだよ


呼び出された電話の向こうで、君は確かにそう言ったね。初めて浴びせられたその言葉に、僕はそれこそ天にも昇る気持ちだったんだ。だって、君から口にされるそれを、僕はずっと待ち望んでいたのだから。それが弱みになることも、君は理解していただろうに。でもごめんね、それは生憎君への説得には使わない。僕が僕に対する説得に使う。彼を、何処までも愛し尽くしていいのだと。
だから僕は君を呼んだんだ。丁度仕事が終わったくらいの電話だったから、今すぐ来てって、それだけ。そうしたら何かを言おうとしたみたいな口ぶりをさせていたけど、ゆっくり携帯の向こうで頷いたのは判っていた。
暫くしてやって来た君は、妙に眉間にしわを寄せた顔つきをしていた。珍しいなぁと思いつつも、室内に促し玄関を閉める。何か飲むかと訊ねたが、彼はただ横に首を振った。
気まずいような雰囲気。さっきから何か言いたそうにする口に、僕はこちらから訊ねてあげる。

「なに?どうしたのかな、佐藤くん」
「いや…まあその」
「さっきの言葉のこと?」
「…ああ」

歯切れ悪く肯定する佐藤くんに、僕はにやりとして笑った。それはあくまで表情に出してはいないことだけど、君には十分伝わっていたようで、びくりと肩を揺らしていた。そんな佐藤くんに近づきながら、ただ僕は手を伸ばして君に触れたいと願った。

「嬉しかったよ」
「相馬…実は、んッ」
「やっと叶ったんだ」

漸く判りあえたはずなのに、触れた口づけは合意の上ではない。受け入れてくれない舌に嫌気がさし、それでも必死に掻き乱す。確かに触れているはずなのに、決して触れられないこの感情は、一体なんなんだろうね。

「やめ、ろ相馬!違うんだ、あれは…っあ」
「何が違うの」

抵抗した末に離された口。二人を繋ぎ、顎をつたう涎がいやらしい。そして、それを舐めとる舌が這う。首筋に触れれば鳴いた。泣きそうに、鳴いた。顔を押さえ付けていた手が彼の口に侵入し、指は濡れる。ざらつく舌をなぞると、震える身体にぞくぞくした。

「もう、遅いんだよ」

その言葉は、ちゃんと君に届いているんだろうね。
だってさ、君がそう言ったんだよ。あの電話で、好きだって。そう言われた時の嬉しくて泣きそうだった僕を、君は一体どうしたいの。
僕はやっと叶った夢の中で、また夢を見ているんだ。

(100526)
相佐企画様に捧ぐ。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -